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平成26年度リスク研究センター助成研究報告 1304

予防・医療・介護サービスの実施における医療・介護資源の地域偏在の影響評価

経済学科 准教授 佐野洋史  


 本研究では、予防・医療・介護サービスの実施に医療・介護資源量の地域差が与える影響を定量的に分析し、地域の医療・介護資源不足によるサービス実施の阻害状況の評価や、実施状況の改善のための資源確保策等を検討した。 地域の予防サービスとして約1,600市区町村の乳がん検診と子宮頸がん検診を分析対象とし、これらの受診率にマンモグラフィ台数や婦人科医師数といった医療資源量がどの程度影響しているのかを評価した。重回帰分析の結果、市区町村別乳がん・子宮頸がんの個別検診受診率には郵送や個別訪問による対象者への通知、地域住民の所得水準などに加えて、女性人口当たりマンモグラフィ台数や婦人科医師数が影響していることが明らかとなった。マンモグラフィは都市部(市区)で、婦人科医は非都市部(町村)で、台数・人数の少なさががん検診受診率を低下させていた。  地域の介護サービスにおいてはその労働者不足が問題視されているため、介護労働者はどのような勤務条件を特に重視して勤務先を選ぶのかを分析した。コンジョイント分析により、勤務条件に対する約1,200人の介護労働者の選好を把握した結果、賃金水準以外に通勤時間の短さや研修費用の補助が重視されていることが明らかとなった。また、非正規職員のうち常勤労働者は、就業形態が非正規職員から正規職員へ変わることも特に重視していた。従って、地域の労働者不足を解消するためには、近隣住民への積極的な募集活動や研修費用の補助、非正規職員から正規職員への登用機会の保障といった施策が有効であると考えられる。  地域の医療サービスについては、確率フロンティア分析により約1,000公立病院の技術的効率性を測定し、医師や看護師の不足が病院の入院医療の生産性をどの程度低下させているのかを評価する予定である。現在、様々な既存調査や地方厚生局から収集したデータを分析しているところであり、今後、各病院の医師数や看護師数が入院医療サービスの生産に与える影響や、地域に必要な医師数・看護師数などを明らかにしていく。
【研究成果発表の時期と方法 】
医療資源の地域差が予防サービス(がん検診)に与える影響、および勤務条件に対する介護労働者の選好は、本年中にリスク研究センターディスカッションペーパーにて発表した後、国外の学術雑誌に投稿する予定である。公立病院の技術的生産性と医療資源量の関係についても、分析結果がまとまり次第、同様の手順で成果発表を行う。


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