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平成29年度リスク研究センター助成研究報告 1704

企業の社会的責任情報開示が価格形成に及ぼす影響

経済学部教授 野田昭宏  


【これまでに実施した研究内容について、(ⅰ)実施方法、(ⅱ)研究成果(ⅲ)進捗程度】


(ⅰ)実施方法

 本研究は,環境,社会及び企業統治に関する会計情報の外部報告に焦点を当て,資本市場において社会的責任投資が形成される過程で,CSR会計情報の開示が及ぼす影響を解明し,持続可能な社会的市場を形成するための制度設計の基盤となる知見を提供することを目的とする。
 研究は,CSR成果に関して異質な効用関数をもつ投資者と企業から構成されるモデルを設定し,3段階に分けて分析している。
 (a) 企業の社会的責任(CSR)活動に関する企業の情報開示が資本市場の価格決定メカニズムにもたらす影響について予備的な分析を実施した,
 (b) 異質な情報利用者が市場に存在することを前提として,企業がCSR会計報告においてどのような裁量行動を行うか分析した。さらに,
 (c) 上記のCSR会計報告における裁量行動に加えて,CSR投資決定に関する企業の意思決定をモデルに導入し,CSRプロジェクト集合からの選択に関する決定を導出した。

(ⅱ)現時点での研究成果

 現在までに本研究が得た主要な結果は3点である。第1は,企業のCSR会計報告の裁量行動が,市場を構成する社会的責任投資(SRI)の増大にしたがって抑制されるようになる点である。第2は,CSR会計情報の開示に対する株価反応が,CSR投資から生じるCSR業績と企業キャッシュフローの整合性に依存することを明らかにした。第3に,CSR会計報告マネジメントが可能な場合,企業は,将来キャッシュフローと非整合的なCSRプロジェクトを選択する誘因をもつ。

(ⅲ)進捗程度

[ 70 ]%
 申請時に具体的な実施内容として計画した5項目のうち,ひとつを除きすべて実施し,概ね順調な研究が推移していることから70%と評価した。5項目は,
 (1)日本会計研究学会第76回全国大会(2017年9月)論題報告,
 (2) European Accounting Association(EAA)のカンファレンス・ペーパーの 投稿(2017年12月),
 (3) リスク研究センターディスカッション・ペーパー発行,
 (4) EAA年次カンファレンスにおける論題報告,
 (5) 国際査読誌投稿
からなり,このうち,(4)を除く項目すべてを2017年度中に実施済みである。なお,未実施の(4)については,本研究計画申請時に,第2年の実施を計画したものであり, 2017年単年でみた本研究の進捗状況は実質的に100%である。

【研究成果発表の時期と方法 】


本年度実績として,国内学会における論題報告1件,国際学会(2018年6月開催)カンファレンスペーパー投稿1件,および,国際査読誌への投稿1件,ワーキングペーパー発行1件を実施した。

【国内学会論題報告】
 日本会計研究学会第76回全国大会(於広島大学,9月24日)において論題「CSR情報開示の価格形成への影響」を報告した。報告は,当該研究課題に関するモデル分析から得た予備的結果(上記実施方法(a)の分析結果)を提示したものである。

【国際学会カンファレンスペーパーの投稿】
 次年度に開催されるEuropean Accounting Association年次カンファレンス(於Bocconi University,イタリア・ミラノ,2018年6月)に論文 "Effects of managerial CSR reporting discretion on market behavior" を投稿したものである。上記の実施方法(b)に該当するCSR会計報告における裁量行動に焦点を当てた分析結果をとりまとめた論文である。投稿は2017年11月30日に実施したものであり,パラレル・セッションの報告論文として採択通知を得ている。

【国際査読誌投稿】
 上記実施方法(a)と(b)にもとづく分析結果をとりまとめた論文論題"Corporate social responsibility and market response"を投稿し,現在,改訂作業中である。

【ワーキングペーパー発行】
 2017年12月に本学経済経営研究所より,"Corporate social responsibility disclosure, trading volume, and price changes"(滋賀大学経済学部 ワーキングペーパー No.276号)として発行したものである。上記(a)の予備的考察の分析結果をとりまとめたものである。



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