(助成期間が満了された報告書を掲載しています)
- 受付No:2401
- 研究者名:新久 章
- 研究名称:公共空間の自律的利用に資する受容型リスクマネジメントの成立要件
研究成果の概要
高次元統計的推測の代表的な方法であるdebiased Lassoに対する既存の不均一分散に頑健な分散の推定量(HC推定量)は、過小推定になりやすいという問題がある。その問題を解決するために、本研究では、過小推定になりにくい性質を持つ新しいHC推定量の開発を行った。
最小2乗推定量に対する既存のHC推定量の研究を参考に、debiased Lassoに対して新しいHC推定量を提案した。そして、独立同一分布の仮定のもとで、提案したHC推定量には上方バイアスがあることを示した。これは、提案したHC推定量は過小推定になりにくいことを意味する。さらに、説明変数や誤差項に正規性を追加的に仮定したもとで、提案したHC推定量は一致性を持つことも示した。また、提案したHC推定量は様々な設定のもとで良好な性能を持つことを数値実験によって示した。これらの結果を、2025年8月に早稲田大学で開催された国際学会EcoSta 2025で発表した。
- 受付No:2402
- 研究者名:近藤 紀章
- 研究名称:公共空間の自律的利用に資する受容型リスクマネジメントの成立要件
研究成果の概要
本研究では、公共空間における⾃由で⾃律的な利⽤を⽀える「受容型リスクマネジメント」の成⽴要件を明らかにするため、広場・美術館・図書館等6施設の⽐較調査、屋台営業の実践を通じた警察対応の分析を⾏った。その結果、⾃由な利⽤を⽀えるには、施設の⽬的に応じた寛容性の設定、細かな禁⽌に依存しない現場判断、空間のしつらえによる予防、利⽤者同⼠の⾃律的な関係形成が重要であることが⽰された。加えて、地域住⺠の苦情・通報が警察にとって⾃由利⽤を制⽌する⼤きな契機となることも明らかとなった。
- 受付No:2403
- 研究者名:森 宏一郎
- 研究名称:環境配慮行動に関する社会ネットワークの研究
研究成果の概要
本研究は、社会ネットワークを通じた環境配慮行動の伝播メカニズムの解明を目的として、大きく3つの研究を実施した。 第一に、学生を被験者とする経済実験を設計し、コンピュータ上に構築した仮想的な社会ネットワークにおける環境配慮行動の伝播を分析した。その結果、環境配慮的に振る舞うBotを導入した場合、Botと直接つながる個人は環境配慮行動を取りやすくなる傾向が確認された。本成果は現在、査読付き国際学術誌に投稿中である。 第二に、島根県で活動する環境NPO法人を対象にインタビュー調査を実施し、実社会におけるネットワーク構造や行動伝播の実態に関する示唆を得た。特に、他者への影響はネットワークの縁辺部で生じている可能性が示された。現在、論文化に向けて整理を進めている。 第三に、生産者と消費者が環境配慮・非配慮行動を選択するミクロ経済モデルを構築し、社会全体が環境配慮型へ移行するための条件を導出した。その結果、社会の大多数が環境配慮型行動を取らなければ持続的な転換は困難であり、一時的な改善はあっても非配慮型へ回帰する可能性が示唆された。本成果も現在、査読付き国際学術誌に投稿中である。
- 受付No:2404
- 研究者名:後藤良介
- 研究名称:自然言語処理技術を活用したサステナビリティに関する企業戦略・リスクマネジメント定量化手法の研究
研究成果の概要
カーボンニュートラル(CN)への移行が世界的に加速する中、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を受け、日本では2023年から上場企業に対してサステナビリティ情報の開示が義務化された。企業にとって社会価値と企業価値の両立がこれまで以上に重要となっている一方、サステナビリティ戦略やリスクマネジメントは主に文章情報として表現されるため、企業業績やCO2排出量といった定量データとの関連性を客観的に評価することは従来困難であった。本研究では、有価証券報告書に新設された「サステナビリティに関する考え方及び取組」を分析対象とし、自然言語処理技術を活用してCN戦略を定量化したうえで、統計的残差分析により評価を行った。その結果、企業規模や業種はサステナビリティに関する特定トピックへの関与の差異を明確に反映している一方、財務指標との関連性は相対的に小さいことが明らかとなった。本研究の手法は、開示文書から新たな知見を引き出すための有効なアプローチとして位置づけられる。
- 受付No:2501
- 研究者名:近藤豊将
- 研究名称:非線形写像の不動点近似法とその応用
研究成果の概要
不動点近似法に関して筆者自身が「反復スキーム生成法」と命名した方法を様々な既存の近似法に適用した。具体的には、Mann-type近似、縮小射影法、縮小写像系を対象としたPicard近似法の証明を再検討することで、反復スキーム生成法の枠組みを発展させた。その成果は複数の査読付き論文として、国際ジャーナルに掲載された。その他、Halpern-typeの不動点近似法の解説文も執筆し、これも査読を経てイタリアのジャーナル Rendiconti di Matematica e delle sue Applicazioni に掲載した。
- 受付No:2502
- 研究者名:金 秉基
- 研究名称:ベトナムの経済成長と都市化が森林に与える影響(The Impact of Economic Development and Urbanization on the Forest in Vietnam)
研究成果の概要
経済成長と森林資源は一般的にU字型の関係にあると言われる。経済発展に伴い森林面積は、最初は減少するが、ある時点を過ぎると増加に転じる。ベトナムを除くすべてのASEAN諸国は、急速な経済拡大と同時に森林面積の減少を経験している。ベトナムの森林面積は1990年以降増加の傾向をみせている。ベトナムの工業化、農業拡大、木材輸出、都市化が森林面積に与える影響を1990年から2024年までのデータを用いて、対称および非対称ARDLアプローチで分析した。その結果、農産物および林産物の需要は長期的に森林を増やす影響を与える一方、都市化は減らす影響を与えることが分かった。急速な都市化は、近い将来、森林の分断化と森林劣化につながる可能性が非常に高い。これは、ベトナムの森林におけるEKCが逆N字型に対応していることを示している。そして、ベトナムのEKCは最終的にW字型になると予想される。
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- 受付No:2503
- 研究者名:福浦厚子
- 研究名称:モノと人との関係性からみた祭祀再考:慰霊と骨をめぐる人類学的試論
研究成果の概要
本研究ではモノと人との関係性について、とくに祭祀や慰霊における遺骨と人との関わり合いやもつれ合いといった観点から検討した。研究代表者と共同研究者はそれぞれの調査地域での慰霊と遺骨に関する調査を行ってきているが、その比較として北海道浦河地区のアイヌの長老らを対象にした聞き取り調査を実施した。その結果、慰霊のゆくえや生きている人たちと骨との関係性などが骨の物質性をめぐってそれぞれに対照的であることがわかった。例えば、遺骨は骨としてその形状を保持しつづけるべきであり、その状態こそが子孫に影響を与えるといった考えがあるが、アイヌの場合は、骨としての形状を保持するのではなく、自然に還る(消失する)ことこそが生きている親族にとって、あの世とこの世との往還に関わる考え方に決定的であり、重要かつ肯定的な意味を与えるといった点について意見交換を行い、慰霊の意味について検討することができた。それらはWorking Paperとして公刊する予定である。
- 受付No:2504
- 研究者名:和田佳之
- 研究名称:モビリティと空間設計の相互依存性に関する研究
研究成果の概要
今回支援を受けた研究助成は、申請者にとって研究に留まらず、教育を含む大学教員としての業務全般の効率性改善に大いに貢献した。具体的にはこれまで使用していた2008 年製の、起動に10分以上を要したパソコンから、わずか1 分弱で起動する最新機種への買い替えにより、様々な処理能力が大幅に向上し、タイムパフォーマンスが劇的に改善した。当然、研究面においてもこの恩恵は大きく、論文検索やダウンロード作業がたやすくなり、先行研究の概要把握が効率的に実行できる環境が手に入った。今後は、この恵まれた環境を生かし、論文執筆に反映させたい。
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