【ワークショップ総評】
今回のワークショップは、「本学研究者と学外研究者との交流を促進すること」を目的とした、客員研究員による学会報告型のワークショップでございました。
日程は全2日で、今日までで半分の方にご報告いただきました。各報告の講評に先立ちまして、改めてではございますが、本センター設立の趣旨を確認させていただければと存じます。
それは、
- リスクと不確実性に関連する研究
- リスク研究普及と深化のための研究成果蓄積
- リスク研究蓄積と教育を通じた社会生活に潜む諸々のリスクの理解と普及であります。
これらの遂行のために主な活動領域を①国際リスク、②金融リスク、③経済・社会リスクの3領域とし、セミナー、シンポジウム、それと今回のワークショップを通じて取り組んでいます。
本日はそのうち、③経済・社会リスクにつきまして三輪氏および福嶋氏より、②金融リスクにつきましては海老原先生・本学赤塚先生にカバーしていただけたのではないかと考えています。
顧客獲得と維持に関する実証分析 三輪幸大 氏(大阪大学経済学研究科博士後期課程在学中)
最初は(『公募型』客員研究員)三輪氏による「顧客獲得と維持に関する実証分析」であり、顧客獲得方法と顧客維持の関係についてご報告いただきました。私にとってユニークだったのは、データに美容サービスのミクロデータを用いた点でした。こうしたデータは従来なかなか入手できないか、そもそも存在しないものでありましたが、情報化や電子化によるビッグデータ蓄積が、今後こうしたニッチ市場の分析に活用され市場に潜むリスクを洗い出してくれるものと感じました。また多くの非線形回帰モデルの紹介は、エコノメトリシャンの端くれである私にとって刺激的なものでありました。
次は(『公募型』客員研究員)福嶋氏による「ベンチャー類型による新規事業促進効果に関する比較研究」であり、こちらもマネジメントに関するものでありました。これからの成長を占ううえで、ベンチャーの保護・育成は重要課題ですが、その類型を事例研究として詳細に紐解き、日本に適したスタイルを提唱されるというのは、リスクを回避しより確実なリターンを得るうえで重要な示唆を得た気がしました。地方銀行単体の業績指標の価値関連性―業務純益を明示しない損益計算書の様式の妥当性に関して― 海老原崇( 武蔵大学経済学部教授)・赤塚尚之(滋賀大学経済学部准教授) 最後は(『共同研究・助成研究型』客員研究員)海老原先生・本学赤塚先生による「地方銀行単体の業績指標の価値関連性―業務純益を明示しない損益計算書の様式の妥当性に関して―」でありました。私のような経済統計系の研究者からすると、決算書やディスクロージャー誌のフォーマットというのはgiven(所与)として扱っていたのですが、実はそうしたフォーマットというのは完成形ではなくて、今なお改善の余地があり発展過程にあるのだと思い知らされました。最新の学会誌に掲載されたご業績をわかりやすく説明頂き、「業務純益やその関連指標と価値関連性は、経常損益や純損益との関連性に比べ勝るとも劣らないレベルである」というエビデンスを精緻なデータ分析から示してくれました。
以上、本日の3報告は、経済・社会リスクおよび金融リスクの具体的応用例として、関心のある皆様の脳裏に刻まれると同時に、本センターの貴重な研究資源として、蓄積されたものと確信いたします。貴重な場を作っていただいた皆様には、改めて御礼申し上げます。
■プログラム、ポスターはクリックすると拡大されます。