日 時:平成30年6月19日(火)16:10~17:10 会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室Ⅰ(士魂商才館3F) 演 題:『Does Refinancing check overinvestment?』 講 師:Harminder Singh 氏(豪 ディーキン大学 准教授) |
【講演者紹介】 Harminder Singh氏(ディーキン大学准教授、Department of Finance)は、インドのデリー大学でPh.D.を取得後、14年間母校で教鞭を取り、2004年からディーキン大学(オーストラリア)に着任されました。Singh氏の専門分野はファイナンスであり、主に株式市場の実証分析に取り組まれています。滋賀大学とディーキン大学は海外提携校の関係にあり、昨年に続き今年も6月下旬に20名ほどの学生が海外研修として彦根キャンパスを訪れています。Singh氏はディーキン大学ファイナンス学部の国際交流の責任者として学生に同行され、昨年に続き今年も最新の研究発表をお願いしました。 【講演内容】 企業の過剰投資の問題は、以前から「株主(shareholder)」と「債権者(debtholder)」の対立として認識されてきた。リスクの高いプロジェクトに過剰投資を行うことは、成功した時の報酬に比例して収益が高くなる株主に有利であるからである。一方で、非対称情報モデルの枠組みからは、企業の過剰投資は「株主(プリンシパル)」と「代表取締役(エージェント)」の問題としても捉えることが出来る。この場合には、新規投資をの資金調達を借り入れに依存させることで、金融機関の監視(モニタリング)が機能すると考えられている。今回の研究は、このような先行研究を踏まえて、「企業の借り換え(リファイナンス)が近づくと、過剰投資の歯止めになる」のではないかという仮説をデータに基づいて検証するものである。 データに関しては、US CompustatとSDC Dealscanから1980~2016年までの米国企業の会計データと商業融資データを用い、合計で92,000データ(年・企業)となる大規模データを準備した。実証分析の枠組みとしては、上記のパネルデータ(多企業の時系列データ)を用いて、過剰投資変数をコントロール変数として企業会計変数を用い、借り換えリスク変数の効果を分析した(以下「変数の説明」を参照)。主要な分析結果として、借り換えリスクの上昇(翌年度に期日の迫った短期負債比率の上昇)に面した企業は、過剰投資を抑制する傾向があることが示された。ただ、この抑制効果は短期的であり、中期的には過剰投資が再過熱することも示された。 【変数の説明】 過剰投資(overinvestment)変数は、二段階のプロセスを経て作成されます。最初に、投資金額を被説明変数として、企業会計変数等を説明変数とする投資関数を推定します。この回帰残差がプラスの場合、通常時よりも投資が大きいことを示します。過剰投資変数は、この残差がプラスの場合に1を取り、残差が0以下の場合に0を取るダミー変数として表されます。 借り換えリスク(refinancing risk)変数は、負債全体に占める短期負債の比率であり、具体的には1)満期一年未満の負債/(満期一年未満の負債+長期債務)、2)短期債務/(短期債務+長期債務)の二種類を用いている。
ファイナンス学科教授 吉田裕司
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