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平成30年度 応用経済学セミナー 20180614

リスク研究センターでは、平成30年6月14日(木) 大阪大学社会経済研究所より、敦賀 貴之氏 をお迎えして、応用経済学セミナーを開催いたしました。

  日 時:平成30年6月14日(木)16:10~17:10 
  会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室Ⅰ(士魂商才館3F)
  演 題:『ヘリコプターマネーと財政政策の実施ラグ』
 講  師:敦賀 貴之氏(大阪大学 社会経済研究所 教授)  
 敦賀貴之氏はご専門が金融・財政論、理論経済学であり、今回はマクロ経済学のメインストリームで使用される「ニューケインジアンモデル」をベースにした分析とその意義を披露していただきました。日銀による2%インフレ目標達成が足踏みしている現況にあって、ヘリコプターマネー(money-financed fiscal stimulus、以下ヘリマネと略記)という政策は、ワイルドカードとして、特に2016年秋の日銀による「総括的検証」時に注目されたことが記憶に新しいでしょう。
 講演では、最初にヘリマネを定義づけたうえで、日本の状況認識や海外の先行研究を概説頂きました。
Gali(2017)による結論を引用され、ヘリマネは「GDP増加」「マイルドなインフレ」「政府債務比率低下」「経済厚生の改善」等多くのメリットがあり、少なくとも一部研究者が唾棄するような政策ではないことを強調されました。そのうえで、これまでの分析に欠けていた「政策実施ラグ」に注目し、このラグを取り入れた分析を進めることになります。
 以降はモデルの分析に則した解説をして頂きました。モデルの説明には、インパルス反応の図を紹介しつつ、経済変数間のダイナミクスが明瞭となるよう工夫されていました。ラグなし・あり、定常時・不況時、2種の貨幣需要関数(CIA、MIU)の経済効果をそれぞれ検証し、有効な政策足りえる条件を明示したことが大きな貢献といえるでしょう。
 いわゆる主流派経済学のマクロモデルの中からマネーがネグレクトされて久しく、貨幣論を勉強してきた身としては肩身が狭く感じていましたが、氏の論文にあるように貨幣需要関数の役割が再びフィーチャーされ、心強い思いで拝聴させて頂きました。
 一方で、氏が先行研究として挙げられたTurner氏は、バンキングセクターによる信用創造も重要視すべきと主張しています。この点に注目し、モデルのmtのパスが変わるとすれば、また違ったインプリケーションがあるのかとも感じました。
 本報告で用いた分析手法は大きな訴求力を有し、フロアの学生諸君にも魅力的に感じたものと思います。ただし、同様の分析を効率的に実施するには、MATLAB & Dynareのようなソフトを用意した上で、ニューケインジアンモデルの前提となるラムゼイモデルやRBCモデルの理解が必要でしょう。さらには、固有値分解を含めた行列計算のスキルをもってフォーワードルッキングな経済モデルの解法にも通じていなければならない。こうした点については、本学教育体制の課題になるものと感じました。 氏には、参加者に学生(学部・院生含む)が多いということもあり、わかりやすいハンドアウトを用意頂きました。さらに、フロアからの質問につきましても、モデルに則り的確にお応え頂けたことに、進行役としてありがたく感じました。
 最後に、私にとって氏は直接ご指導を賜ったことはないものの、同じ大学院研究室に所属していた兄弟子にあたる方でした。一昨年前の新谷先生講演時にも同席頂き、本センターとしても大変お世話になってきた方でもあります。数多くの政府機関や大学での勤務をご経験されてこられ、懇親会ではその時折の興味深いお話を拝聴でき、大変有意義な一日となりました。
                                                文責:経済学部 経済学科 教授 得田 雅章

 

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