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リスク研究ワークショップ第2回(2017年度) 20180208

リスク研究センターでは、平成30年2月8日(木)、客員研究員(公募型)5名と滋賀大学大学院卒業生1名による、ワークショップ第2回目を開催致しました。

  日 時:平成30年2月8日(木)14:30~18:00
  会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室(Ⅰ)(士魂商才館3F)
 発表者:橋本京子 氏・博士(教育学、京都大学)
     高梨誠之 氏・京都大学大学院経済学研究科博士後期課程在学中
     中尾彰彦 氏・博士(経済学、滋賀大学)
     林史明 氏 ・京都府庁・神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学
     栗田健一 氏・博士(経済学、北海道大学)・学習院大学ラーニングサポートセンタースタッフ他
     田島正士 氏・博士(経済学、滋賀大学)・京都外国語大学

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【ご報告】
 2月8日(木)に第二回目のリスク研究ワークショップを開催致しました。昨年11月30日(木)に開催したワークショップの続きとなります。以前のリスクフラッシュの説明の繰り返しになりますが、この一連のワークショップは、今年度の新しい試みの一つである、公募型の客員研究員制度と密接な関係があります。リスク研究センターの公募型客員研究員になるための応募資格は、いわゆるドクター(Ph.D)コースである博士後期課程に在学中の大学院生、もしくは既に博士号を取得しているポストドクターとなっています。これは、社会科学の若手の研究者を中心に、学外での研究経験を積む場を提供することで、滋賀大学として日本全体の学会への貢献を果たすことも重要な目的となっています。
 橋本京子(教育学博士(京都大学))氏の「ポジティヴ志向とリスク認知・リスク受容の関係-ポジティヴ心理学の観点から」は、心理学の分析の多くがマイナスの観点から行われてきた傾向が強い中、どういう要因によって「前向きな考え方」のようなポジティヴの心理が働くのかを分析するポジティヴ心理学についての研究分析の報告でした。本研究では、福岡県と大阪府の大学学部生をアンケートの対象として、「楽観性」「リスク認知」「ポジティヴ志向」「リスク受容」「幸福感」についての質問項目から、因子分析による統計的な分析を行い、「ポジティヴ志向」と「リスク」の関係を明確にしようとする先駆的な報告でした。
 林史明(京都府庁)氏は、「自殺行動の経済分析~利他的な自殺~Altruism in Suicide Behavior」において、日本における死亡要因としての「自殺」は「殺人」や「交通事故」よりもはるかに多い人数となることを指摘した上で、ミクロ経済学を基盤とする理論モデルの構築の重要性を指摘しました。自殺を単独の行動と理解するのではなく、自殺を考える人と周りの支援者との人間関係として捉えることで、複数の人間間の戦略行動を解く手法であるゲーム理論を適用しています。林氏は、社会人として神戸大学博士後期課程にて満期単位取得した後、現在も京都府庁で自殺対策の取り組みをしながら、博士論文の完成に取り組んでいます。
 高梨誠之(京都大学大学院)氏の「社会的選好のリスク環境下への拡張方法」は、ミクロ経済学の基礎理論の研究であり、自己と他者を同時に含む効用関数を分析する「社会的選好」の研究報告でした。効用関数の基礎理論では、「選好」が満たしておくべき性質(公理)について詳しく分析しますが、今回の発表では「事前の公平性」「事後の公平性」「(弱)独立性」を同時に満たす効用関数の型式を特定しています。Fudenberg and Levine(2012, JEBO)も同様の分析をしていますが、公平性の公理が若干異なっています。高梨氏は4月から九州大学の新たな地にて、研究を続けられることが決まっています。
 中尾彰彦(経済学博士(滋賀大学))氏の「ユニバーサルな住宅金融のあり方について~消費者の過大なリスク負担の解消に向けて~」は、日本の住宅金融の問題点を明確にするために、ニュージーランドの住宅金融との比較分析を行い、日本の住宅金融における「借主へのリスク負担偏重」と「中住宅市場の未整備」を指摘しました。日本の住宅ローンでは返済が困難になった場合に住宅が競売にかかった上でローン残高が残りますが、米国の「ノンリコースローン」では住宅を手放した時点でローン債務から解放されます。また、ニュージーランドでは中古住宅価値を適切に査定する専門職があります。中尾氏は日本の中古住宅市場並びに住宅金融市場の改革の政策提言を行いました。
 栗田健一(経済学博士(北海道大学))氏の「地域コミュニティのレジリエンスを強化する試み-神奈川県相模原市旧藤野町の事例分析-」は、長年取り組んできたフィールドワークの報告でした。神奈川県相模原市では様々な地域の取り組みが行われていますが、その一つである地域通貨「よろず」について解説をしました。中央の決済システムのようなものは無く、参加者各自が「よろず帳」に取引記録を記入し、個人残高がマイナスになることも許されています。報告を聞いていると、通貨と言うよりは公共サービス記録であり、相互補助を促すシステムのようにも理解できました。栗田氏は昨年秋から、国際短期大学の専任講師として活躍されています。
 田島正士(経済学博士(滋賀大学))氏の「加工食品における「風評被害」-福島原発事故に関する経済分析-」は、特定の事例として理解されることの多い「風評被害」について、定量的な実証分析を試みた研究報告でした。テーマとして選んだのは福島原発事故であり、同じものが複数の工場で生産されている加工食品を調査対象として選択しました。着目したのは、同商品が通常価格と特売価格で販売されている事例で、それぞれが異なる工場で生産されているケースです。小売店現地に赴きデータ収集をする地道な努力に基づき、生産工場の福島原発からの距離と工場別の製品価格を用い、本来影響の無いはずの工場別製品に価格差という影響が生じているかを検証する実証分析を試みました。
 今年度の客員研究員(公募型)のみなさんの任期はこの3月をもって満了いたします(新年度の客員研究員に応募可)。平成30年2月末まで、2018年度(2018年4月~2019年3月)の客員研究員(公募型)を募集しています、関心のある博士後期課程の大学院生、もしくは博士号を取得済みの研究生の方をご存じであれば、リスク研究センター客員研究員制度をご紹介ください。

(文責 ファイナンス学科教授 吉田裕司)

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