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平成29年度第10回 政治経済学セミナー 20180118

リスク研究センターでは、平成30年1月18日(木)、笠松 怜史氏をお迎えして、政治経済学研究セミナーを開催いたしました。

  日 時:平成30年1月18日(木)16:10~17:10 
  会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室(大)(士魂商才館3F)
  演 題:『Informative Campaigning in Multidimensional Politics: A Role of Naïve Voters
       ―多次元政治におけるキャンペーンの情報伝達:ナイーブな投票者の役割―』  講 師:笠松 怜史氏(東京大学大学院経済学研究科博士課程2年・日本学術振興会特別研究員(DC1))  

【講演概要】
 これまでのリスク研究センターでのセミナーでは既に優れた研究業績を保有する研究者を招聘してきましたが、今回のセミナーでは将来優れた研究業績を保有することが期待できる若手の研究者を招聘して開催することに致しました。ゲーム理論を政治経済学・公共経済学・産業組織論の分野で応用して研究を行っていらっしゃる東京大学大学院経済学研究科博士課程2年の笠松怜史氏においでいただき、政治経済学に関する研究をご報告いただきました。
 今回のセミナーで笠松氏に報告していただいた研究の目的は、選挙のときに候補者が行うキャンペーンが、有権者に対して真の情報を伝えているのか、そして、有権者はそのキャンペーンによってどのような行動を取るのかを明らかにすることです。現職の候補者に1名の候補者が挑戦する選挙において、sophisticatedな有権者・naïveな有権者・メディアの3主体がどのような行動を取るのかを決定するモデルの構築を行っています。選挙期間が限られている中で、候補者は当選後に自分が行う政策やその実行力をアピールしたり、対立候補の人間性や能力を批判するネガティブ・キャンペーンを行ったりするわけですが、本研究では、どのような問題を強調してキャンペーンを行うかを決める戦略が、候補者だけが持つ私的情報を有権者に伝えるシグナルになることを明らかにするとともに、以下の点が示されました。
 まず、挑戦する候補者が現職の候補者に対して行うネガティブ・キャンペーンは、現職の候補者の能力が低いことを伝えるシグナルとして機能し、有権者の投票行動に影響を与えます。しかし、挑戦する候補者がネガティブ・キャンペーンを行うような均衡が存在するためには、どんな政策が自分にとって価値がある政策なのかが分かっていて候補者が行うネガティブ・キャンペーンによって自分の考えをアップデートできるsophisticatedな有権者しかいない状況ではなく、どんな政策が自分にとって価値がある政策なのかまったく分かっていなくて候補者が行うキャンペーンを額面通りに受け取って投票行動に反映してしまうnaïveな有権者も含まれていることが必要であることが示されました。
 従来の研究では、naïveな有権者が存在しているとsophisticatedな有権者に正しい情報が伝達されず、候補者はキャンペーンを用いて情報の伝達を行わなくなってしまうという分析が行われていましたが、本報告では情報伝達を阻害していると考えられてきたnaïveな投票者が、実は情報の伝達においては極めて重要な役割を持つことを示した研究と言えるでしょう。

(文責 企業経営学科准教授 山下 悠)

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