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平成29年度第2回 応用経済学(医療分野)セミナー 20170511

リスク研究センターでは、平成29年5月11日(木)、井深 陽子氏をお迎えして、応用経済学(医療分野)研究セミナーを開催致しました。

  日 時:平成29年5月11日(木)16:10~17:10 ※開催時間を今年度より変更しております
  会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室(大)(士魂商才館3F)
  演 題:『Dynamics of Health and the Economy Over Time in Japan
           ―日本における健康と経済のダイナミクス―』  講 師:井深 陽子氏(慶應義塾大学経済学部 准教授)  

【講演概要】

 マクロ経済状況と国民の健康との関係性については、これまで相反する実証結果が国内外で報告されている。一般的に好景気は国民の健康を良好にすると予想されそうだが、多くの既存研究が、好景気はむしろ個人の健康状態を悪化させる(不景気は個人の健康状態を改善させる)という結果を示している。その理由としては、不景気により失業すると個人の余暇時間が増えて健康状態が良くなる、所得の低下により飲酒量等が減って個人の健康状態が良くなるなどの可能性が考えられてきた。
 日本においても、不況下の労働市場における国民の健康状態等の特徴について実証研究が行われてきたが、健康状態の指標として主に死亡率が用いられていることや、性・年齢等の個人属性の違いによる健康状態の違いを詳細に捉えた分析が行われていないといった課題が残されていた。本講演では、慶應義塾大学経済学部の井深陽子氏により、マクロ経済状況が日本国民の健康状態に与える影響について、死亡率を含む様々な健康指標を用い、かつ国民の性・年齢や雇用形態、労働時間等の個人属性別に分析した成果が報告された。
 日本国民の健康状態のデータには、複数年の都道府県別死亡率と約50万人の主観的健康感、自覚症状の有無、日常生活での健康上の問題の有無、通院の有無が用いられた。マクロ経済状況には都道府県別失業率が採用され、重回帰分析により各健康指標への影響が確認された。推定結果より、都道府県別失業率の増加は疾患別死亡率や他の健康指標を低下させ、その影響は性・年齢や労働時間により異なることがわかった。すなわち、マクロ経済状況の悪化は、国民の健康状態を短期的に高める可能性が示唆された。
 大規模データを用いた医療経済学研究への関心は高く、当日は多数の経済学部・データサイエンス学部の教員と学生が参加した。分析時の工夫や分析結果の解釈について活発な意見交換が行われ、大変盛況なセミナーとなった。            

   (文責 経済学科准教授 佐野洋史)

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