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平成29年度第5回 マクロ先端研究セミナー 20170706

リスク研究センターでは、平成29年7月6日(木)、青木 浩介氏をお迎えして、先端研究セミナーを開催致しました。

  日 時:平成29年7月6日(木)16:00~17:00
  会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室(大)(士魂商才館3F)
  演 題:『Monetary and Financial Policies in Emerging Markets-新興国のための金融政策と金融規制―』
      (Gianluca Benigno教授、Nobuhiro Kiyotaki教授と共著)
 講  師:青木 浩介氏(東京大学大学院経済学研究科 教授)  

【講師紹介】

青木浩介氏は、神戸大学経済学部を卒業後、同大学院経済学研究科で修士号、米国プリンストン大学でPh.D(Economics)を取得された。その後、LSE(London School of Economics)で教鞭をとったのち、現在は東京大学大学院経済学研究科の教授を務めておられる。青木氏の論文は、Journal of Monetary Economics、Journal of Financial Intermediation、Journal of Economic Dynamics and Controlなどの国際的一流誌に掲載され、当該分野の重要文献として頻繁に参照されている。

【共著者紹介】

論文の共著者も簡単に紹介したい。Gianluca Benigno氏はLSE(London School of Economics)の准教授で、国際経済学や金融論を専門とする。イタリアの出身であり、カリフォルニア大学バークレー校でPh.D(Economics)を取得後、LSEで研究を進めておられるようである。

もう一人の共著者である清滝信宏氏は、現在、ノーベル経済学賞の候補に挙がる唯一の日本人として知られている。東京大学経済学部を卒業後、ハーバード大学でPh.D(Economics)を取得し、現在はプリンストン大学の教授である。

本論文の著者のうち、日本人のお二方はそろって日本経済学会の中原賞を受賞されている。その意味で、今回のセミナーも、これまでに勝るとも劣らず、大変豪華な論文報告となった。ちなみに、もう一人の著者であるGianluca Benigno氏も、青木氏によれば、「中原賞をもらっていない理由はイタリア人だから」だそうである。

【論文の背景】

今回の報告論文の考察対象は、新興国の経済である。具体的には、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)、アルゼンチン、トルコ、インドネシアなどだろうか。これらの国々は、21世紀になってからリーマンショックまでの間に、グローバル経済の中で存在感を強めた。その一つの説明は、簡単にいうと、アメリカでのグリーンスパンFRB議長による低金利政策などにより、ダブついた資金がこれらの国に流れ、成長につながった、というものだろう。この間は、日本でもゼロ金利政策がとられていた。

このように、これら勢いのある新興国の経済は、大国の金融政策による影響を受け、それがまた世界経済全体の活動水準に影響する。そこで働くメカニズムをよりクリアにしたいという問題意識がアメリカの学界で醸成されており、この論文につながることになったのだろうか。

【論文紹介】

 金融面でのショックが新興国の経済に波及する経路とそのメカニズムを明らかにするために、銀行の行動に特に留意した独特なモデルが用いられていた。金融政策、資本流出入、為替レート、利子率、物価水準などが複雑な相互作用を生み出すことになる。その結果は、シュミレーション結果として、視覚的にも分かりやすくプレゼンテーションしていただいた。個人的に特に興味深いと思ったのは、危険資産(risky asset)に対して課税されたときの、資本価格、為替レート、それから厚生水準などの経済諸変数の動きである。税が導入された刹那、大きく動き、反動のような動きも観察されるのである。どのようなメカニズムが働いているのか、筆者には十分理解できていないのだが、論文を精読して内容を検討してみたい。

【セミナー後記】

 セミナーの後は、本学の数名の教員を交えて、恒例の報告者を囲む食事会に出かけた。今回は、彦根市のキャッスルロードにある近江牛の店であった。近江牛ステーキのコース料理に舌鼓を打ちながら(勿論、筆者のような彦根市民でも近江牛さんとはめったにお会いできない)、研究の話だけでなく大学時代の話も聞かせていただいた。実は青木氏は、本リスク研究センターのYセンター長と大学時代の同期だったそうである。また、部活動として水球をやっており、以前セミナーに来ていただいたM氏(当時、関西学院大学)とライバル関係だったらしい(戦績は聞き忘れた)。勉強やスポーツを中心に、学生生活を共に楽しみ、切磋琢磨する間柄だったのであろう。本学が、学生達にとり、また教職員にとっても、そのような共に成長でき、将来につながる場であってもらいたいと改めて感じた。

(文責:ファイナンス学科准教授 近藤豊将(あつまさ)

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