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平成29年度第12回 産業経済学セミナー 20180301

リスク研究センターでは、平成30年3月1日(木)、松島 法明氏をお迎えして、産業経済学研究セミナーを開催致しました。

  日 時:平成30年3月1日(木)16:10~17:10 
  会 場:滋賀大学 彦根キャンパス セミナー室Ⅰ(士魂商才館3F)
  演 題:『排他条件付取引契約獲得競争の経済理論分析』
 講  師:松島 法明氏(大阪大学 社会経済研究所 教授)  


【セミナー概要】
 報告して頂いた論文「Naked exclusion under exclusive competition(排他条件付取引契約獲得競争の経済分析)」は反競争的な排他的取引契約が実現する条件とメカニズムを明らかにした研究です。
 排他条件付取引契約とは、相手方が他社(ライバル)と取引しないことを条件とした取引契約です。たとえば、アメリカの大学では、キャンパス内に置かれる自動販売機はコカ・コーラ、もしくはペプシどちらかの関連ブランドであることが多くなっているそうです。これは、コカ・コーラやペプシが、それぞれ他方と取引しないような排他的取引契約、つまりキャンパス内の市場を自社で独占することを条件に大学に飲料を供給する契約を結んでいる結果だそうです。そして、そのような排他的な取引は、それ自体は大学にメリットが無いので、排他的契約を結ぶ見返りとして、飲料メーカーから大学に対価が支払われます。
 じつは排他手的取引契約については、過去にはシカゴ学派の研究者が「そのような契約は理論上実現しない」という主旨の主張をしています。排他的取引契約に参加する主体すべてにそうするインセンティブが生じるような状況を、理論的に作り出すことが困難だったのです。
 そのような主張に対して多くの研究者が反論してきましたが、その根拠となる理論の多くが、潜在的な参入企業がライバルである(つまり、まだライバルは存在していない)という設定の元であり、コカコーラ対ペプシのような、現存するライバル同士が排他的契約を取り合うような状況を説明することが出来ませんでした。
 松島氏と共同研究者の北村紘氏と佐藤美里氏は、川上複占ー川下独占と、川上ー川下間のNash交渉を組み合わせた設定のもとで排他的取引契約をとらえ直し、川上の一方の企業と川下企業が排他的取引契約を結ぶことが実現するのはどのような時かを分析しました。その結果、川上ー川下間の交渉において川下企業の交渉力が小さいとき、排他的取引契約が実現しうることが分かりました。排他的取引契約によって川上企業に利益が生じても、川下企業の交渉力が大きいと、川下に対して大きな対価を払わなければならず、結局損してしまいます。一方、川下企業の交渉力が小さいとき、排他的取引契約が無い時の川下の利益は小さいので、わずかな対価でも川下企業が排他的契約に乗る可能性が出てくるのです。
 松島氏は、産業組織論の理論研究における第一人者であり、膨大な業績で知られています。
 今回のセミナーでは、阪大社会経済研究所の所長を務められる多忙な日々の中、今回のセミナーでは専門外の研究者や学生の出席も見込んで、独占・寡占を応用した簡潔明瞭な研究を、平易な言葉で発表して下さいました。
 研究報告を聞きながら、また、懇親会で中華をつつきながら、これほどまでに生産的な研究者となる秘訣は何だろうかと、じっと観察していた参加者は筆者だけではないかもしれません。


(文責 経済学科准教授 石井利江子)

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