・講演日時:2026年7月10日(金)16:10-17:30
・表題:若者ことば研究の展望と課題
・講師:桑本裕二 氏(鳥取県立農業大学校)
・開催様式:対面
・開催場所:総合研究棟士魂商才館3F セミナー室Ⅱ
・参加対象:どなたでも
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開催概要
若者ことば研究は、標準的な言語研究からみると軽視されがちで、体系的な研究はそれほど多くない。この講演では、いくつかの例を挙げながら若者ことば研究の価値を指摘し、今後に向けての展望や、言語学界全体への期待される貢献について考える。
開催報告
言語学の研究は,人間が話す言語・談話すべてが研究対象となる.日本語を例に取ると,正しい言葉遣いや望ましい日本語は研究対象とはならず,むしろ,日ごろ我々がさまざまな場所で使用する日本語,それはぞんざいな口調であったり,ソーシャルメディアだけで使用されるものであったり,方言であったりする.そのような日常使用される言語用法こそが,言語学が見たい「今の日本語のすがた」なのである.
今回の講演会は,日本語の「若者ことば」に関して,長年研究されている桑本先生による,若者ことば研究の歴史や最新事情に関する講演がなされた.日本語の若者ことばを言語学的に研究している研究者はそれほど多いわけではない.それは,若者言葉の研究は,人によっては「ちゃらちゃらした」研究であるとみなされ,言語学の標準的な研究テーマとは考えにくいからである.他方,日本以外の言語(英語やドイツ語など)では,社会方言としての若者言葉の研究は盛んであり,研究の価値は高い.
桑本先生によると,氏は2003年から若者ことば研究を開始したが,それ以前には米川(1996, 1998, 2000など)や山口(1997),永瀬(1999, 2006)があり,2003年以降では,中東(2006)や金水(2007), 秋月(2005)など,さまざまな研究がある.それ以降にも,若者ことば研究の論考や書籍があるが,問題となるのは,「若者ことば」の定義である.
若者ことばは,若者のものなので,通常は中学生から30歳前後の男女という緩やかな定義が考えられていた.しかし,「マジ」という言葉は,現在では,NHKのアナウンサーでもテレビで使用する,さらに50歳代の発話でも「マジ」が出てくるなど,若者の定義から外れる使用状況がある.また,若者ことばは,比較的その使用が短命である(例えば,「ナウい」や「マンモスうれぴー」はもはや使用されない).
このように考えると,若者ことばの研究は,形態変化や意味変化の程度が激しい一方,その用法は言語学の理論と合致する部分が多い.そして若者ことばに注目することで,言語変異や言語変化,言語運用に関わる特徴を多く持っており,言語学の研究対象として価値がある.
文責:野瀬昌彦(経済学部教授)
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