- 日 時:2026年3月18日(水)9:30-11:00
- 表 題:講演会「滋賀大学経済学部所蔵史料の歴史化をはかる」
- 発表者:阿部安成(本学経済学系教員)湯川真樹江(経済経営研究所客員研究員)
- 開催方式: オンライン(Zoom)
講演概要
滋賀大学経済学部には、その始原である旧制官立彦根高等商業学校以来の図書や文書などが歴史資料としてあります。その一つの大きな特徴が、東アジアをフィールドとした文献が豊富にあるということ、とりわけ、「満洲」をめぐる歴史資料がその多くを占めるということです。
歴史資料は、歴史をたどるうえで不可欠である資源です。今回は、滋賀大学経済学部が保管する歴史資料の来歴をたどるとともに、特に「満洲」をめぐる歴史資料の概要とその由来とを示して、大学にある歴史資料の活用について展望します。
講演報告
2026年3月18日に、「滋賀大学経済学部所蔵史料の歴史化をはかる」と題した滋賀大学経済経営研究所講演会(研究報告会)を開催しました。その内容を『彦根論叢』第448号(2026年7月)と同第449号(同年10月)に寄稿する予定です。報告の詳細は、同誌上にゆずるとして、ここでは、報告後のディスカッションで尋ねられた、史料をどう保存してゆくかについて記すこととします。
ディスカッションでだされたさきの質問にたいして、わたしは、湯川報告にあった加藤聖文さんの言を引きながら、「器」と「人」とこたえ、それにお金をくわえました。
まず、「器」――これは、保管する史料の多寡によってその容量がかわります。史料がたくさんあれば、より多くの空間を必要とします。これがなかなかに厄介で、書庫問題は、多くの大学附属図書館のみならず公共図書館でもそれを課題や懸案事項としている館がたくさんあることでしょう。さらに、書庫とは、ただ場所があればよいわけではなく、可能であれば、温度湿度の整備も欠かせません。それなりの広さと整った環境を確保するには、それなりの資金が必要です。
どうにも狭くて環境も悪い場所しかないばあいには、代替の媒体をつくって保存と公開の手立てを整えるという手段もあります。かつては、マイクロフィルムに写す、もはやマイクロフィルムの製造が終ってしまったいまではデジタル画像(デジタル化)として残して、原史料ではない媒体で保存して、それを公開する――このばあいは、原史料よりもはるかに小さな場所で保管をすることができ、かつ、デジタル画像の作製はWeb公開へもつながります。ただし、だいぶ安くなっているとはいえ、デジタル化にも当然のこと資金は必要です。業者発注を避けて安くあげるのであれば、(とはいっても、デジタルカメラやハードディスクは必要)、自前で撮るということも可能です。(このばあい、原史料はどうなるでしょう?)
代替媒体をつくるための資金であれば、個人研究費や外部資金を得て、あるていどはそれを進めてゆけるでしょう。ところが、適切な空間と環境を保持するには、たとえば大学では、さまざまな部局との、施設整備や予算申請をめぐる調整が待ち受けています。ほそぼそと手作業でデジタル画像をつくっていっても、それを保管してさらにWeb公開するとなると、そのためのサーバーを運用するために、そこそこの経費がかかります。
こうやって、あれこれ必要な手立てを書きあげてゆくと、そのむつかしさが重くのしかかってきます。こうした難事一つひとつに、粘り強く対処してゆく「人」の役割が大きく浮かびあがってくるでしょう。どういう組織でもどんな機関でも、「人」ひとりではこの難事を乗り切れません。「人」「人」、そう人びとが結集して史料を残そうという雰囲気、気概、意気込みをともにきずいてゆくこと、そしてそのためにも、多くは紙でできている史料に畏敬を感じることが大切です。古い史料は黴がつき、埃にまみれ、紙魚がついたりへんな嫌な虫がいたりとたしかに汚い。場所もお金も食う。でもそれは、人びとの意思によって、あるいは、その有無にかかわらず偶然にも幾世代にもわたって残ってきた伝承のたまものです。
ときに、いいや、しばしば、歴史研究者には、なんでも、いつまでも、残そうとするという、揶揄というよりも嫌悪や非難の言葉が投げつけられます。そうではない、いいや分別はある、といいいたいものの、そうした悪罵や嘆息をもひとまずは受けいれて、それをふくめて、つぎへの伝承を担うべく、人びとの意思の表明をしあうこともまた、必要なのです。ここではあえて、対話とは記しませんでした。残そうとするものと、捨てたくなるものとのあいだでの、意思の表明のしあいをする、それを続けることで、なにはともあれ、そのあいだは、史料が捨てられることはないでしょう。人びとの意思が、史料を残し、また、人びとの意思が確実に史料を捨てます。捨てるまえに、なぜ、その史料を残そうとするのかを聞いてください。そして残すほうもまた、なぜ残そうとするのかを説けるだけの話術を身につける必要があります。(この短い文章に7回も「必要」の語を書きました) (阿部安成)
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