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先端研究セミナー(20260514)

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  • 講演日時:2026年5月14日(木)16:10-17:40
  • 表題:「新たな遺産価値を見出すには?彦根城と西武大津ショッピングセンター、そして、なかなか遺産」
  • 講師:村松 伸 先生(東京大学名誉教授)専門:建築史 
  • 開催様式:対面
  • 開催場所:滋賀大学講堂
  • 15:10~16:10 珈琲セッション/16:1017:40 ご講演(90分)/17:4018:40頃 ワインセッション(講堂内多目的ルームⅠにて行います)


講演概要

彦根城は世界遺産になれなかった。西武大津ショッピングセンターは壊されてしまった。なぜ?建築遺産の価値はどんなふうに誰がきめるのだろうか?そもそも建築はなぜ残さなくてはいけないのだろうか?ヒトは死ぬのに建物を残すことは作り手の傲慢なのか?では、私たちはどうしたらよいのだろうか?建築遺産を取り巻く言説、現象にはわからないことがいっぱいある。きっと私の話を聞くともっと混乱するに違いない。


講演報告

2026年5月14日に開催された先端研究セミナーでは、建築史・建築遺産論を研究する村松伸・東京大学名誉教授をお招きし、ご講演をいただいた。村松氏は建築家とは異なる立場に身を置く建築史研究者として、中国・朝鮮半島・ベトナム・日本を含む東アジア建築の超長期的な歴史観と、建築遺産への批判的まなざしを研究の柱に据えていると自己紹介された。講演に先立ち、コーヒーセッションが和やかな雰囲気のなかで催され、参加者間の交流が弾んだ。

 講演の核心的な問いは、「建築の価値はだれが、どのような論理によって決めるのか」というものであった。村松氏はこの問いを、彦根城と西武大津ショッピングセンターという一見対照的な二つの事例を軸に掘り下げた。彦根城は400年以上の歴史を誇る木造建築であり、城郭建築の代表的遺構と高く評価されている。一方の西武大津ショッピングセンターは1976年に開業し2020年に閉店しその後解体された近代商業施設で、高度経済成長の記念碑として語られ、その解体は日本の衰退を象徴するものとして語られた。この二事例の比較を通じ、建築の評価をめぐる論理と、その背後にある社会的・政治的文脈の変遷が丁寧に解きほぐされ、建築の価値が市民・専門家・行政・国際機関の意図によって構築・更新される動態的なものであることが示された。

 後半では、公的制度が救いきれない建築遺産への新たなアプローチとして「なかなか遺産」という概念が提唱された。国の重要文化財や世界遺産に届かなくとも地域社会と深く結びついた建物を、地域の力と知恵で育てながら補完的に評価しようという試みである。また、都城市の公共施設解体問題を事例に、折り紙展示・ワークショップ・聞き書きなどを通じて市民の記憶を集め残すプロジェクトが紹介され、保存運動における感情と記憶の役割が強調された。講演後のワインセッションでは、講演では十分に伝えることができなかった背景知識などについて意見交換し、参加者間で熱心に語り合う姿があった。

 本セミナーは学部学生・大学院生・教員を含む73名が参加し、「価値」は所与のものではなく、社会的・政治的・個人的な文脈のなかで絶えず構築・更新されるという村松氏の問いは、建築学にとどまらず人文社会科学全般に通じる根源的な視点を提供するものであり、セミナー全体を通じて充実した知的交流の場となった。

(文責:経済学部講師 井上 俊克)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

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