日 時:2025年1月27日(月)14:30-16:00
表 題:講演会「公共空間の自律的利用とその先にある都市生活」(仮)
発表者:笹尾和宏(環境総合研究センター客員研究員)
場 所:滋賀大学彦根キャンパス 6番教室(校舎棟1F)
開催様式:対面及びオンライン
各地で公共空間の利活用が進められるなか、市民が日常生活の範囲で自由に利用するためのマネジメントのあり方に注目が集まっている。これまでの公共空間管理は、禁止事項を示すことで利用者の自由を制限する傾向にあった。しかし近年、できることを示すことで、やりたい、やってみようという内発性を伴う多様なアクティビティが魅力的な空間の創出につながるという「プレイスメイキング」の考え方が主流となりつつある。このような公共空間の自律的利用を支えるマネジメントの潮流について、「Public Hack」の著者であり、環境総合研究センター客員研究員の笹尾和宏氏にご講演いただいた。
講演では、愛知県豊田市の「新とよパーク」が事例として紹介された。新とよパークは、スケートボードなどのストリートスポーツを含む多様な利用を許容する広場として整備されている。観察調査からは、全時間帯の約半数がスケートボード利用しており、主たる利用形態となっていることが明らかとなった。これは当初の「多様な利用を促進する」という目標に対して、利用イメージの固定化という問題が紹介された。しかし、これはストリートスポーツを受容した先駆者であるがゆえの悩みとも言える。
一方、管理面では、新とよパークと各地の広場、美術館、図書館などとの比較分析から「受容型マネジメント」という新しいマネジメントスタイルが示された。これは、空間の主たる目的に応じて寛容性を持った柔軟な運用を行い、禁止事項を最小限にとどめながら、できることを例示することで、利用者同士の自律的な関係性を育むことを目指している。そのため、管理者は問題が生じた場合の個別対応に徹し、利用者はその視座のまま満足度を高め、それが他者にも好影響を与えるような関係性づくりを目指している。この絶妙なバランス感覚や関係性は、ある意味で、まちづくりの担い手としての技術であり、芸でもあるといえよう。さらに言うと、この議論は、対価を支払う消費者やサービスの提供や事業の文脈にはない点が肝要である。あくまで都市の文化や市民としての暮らし方の問題であり、「人にやさしい都市は安くできる」(ヤン・ゲール)や「都市を育む」(ロバータ・グラッツ)という都市デザインの系譜の一翼を担っているということは、記しておきたい。
最後に、本講演会は、パブリックデザイン研究会及び経済学部講義「地域経済論」、令和6年度経済経営研究所研究助成「公共空間の⾃律的利⽤に資する受容型リスクマネジメントの成⽴要件」の一環として開催した。
(文責:経済学部講師 近藤紀章)
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