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経済学部 田中勝也教授・近藤紀章講師らの共著論文が、国際学術誌Transportation Research Part Aに掲載

経済学部の田中勝也教授と近藤紀章講師による共同研究の成果が、国際学術誌『Transportation Research Part A: Policy and Practice』に掲載されました。今回の論文は、本学の学長裁量経費を活用し、米国のポートランド州立大学およびポートランド市交通局と共同で実施した調査の結果を分析したものです。

論文情報

Tanaka, K., Dill, J., McNeil, N., Geller, R., & Kondo, N. (2027). What are safer streets worth? Bridging resident preferences and policy design in traffic calming. Transportation Research Part A: Policy and Practice, 215, 105293.

研究の概要

住宅地などの身近な道路で、自動車の速度や通り抜けを抑え、安全性を高める取り組みを「交通静穏化」といいます。本研究では、生活道路の交通静穏化について、住民がどのような整備方法を好むか、また、その実現のために費用を負担する意思があるかを分析しました。 
米国ポートランド市内の19路線の沿線住民1,717人を対象に調査を実施しました。8種類の整備案から最も好ましい案と好ましくない案を選んでもらうとともに、毎月の負担額を示し、その金額を支払う場合に交通静穏化の取り組みに賛成するかを尋ねました。  

主な研究成果

① 住民から特に好まれた整備案は、道路の中央に歩行者がいったん待機できる場所を設ける「中央待避島(median refuge island)」や、交差点の中央にある小さな島の周りを車が回る「小型ラウンドアバウト(mini-roundabout)」でした。一方、車の通り抜けを制限する「ダイバーター(diverter)」や、路面の盛り上がりによって車の速度を落とす「スピードハンプ(speed hump)」は、全体としては好まれにくく、住民の間で評価が大きく分かれる傾向がみられました。 
② 安全対策のために負担してもよい金額は、1世帯当たり平均で月額約34米ドル、中央値で約30米ドルと推計されました。近所の道路は車が多く自転車で走りにくいと感じる人や、徒歩・自転車での移動を好む人、幼い子どもがいる世帯ほど、費用負担に前向きな傾向がみられました。一方、高齢者や地域の治安に不安を感じる人では、賛同が低い傾向がみられました。 
③ 全体で高く評価された「中央待避島(median refuge island)」を好む人は、追加の費用負担には消極的な傾向がみられました。一方、評価が分かれた「共有空間(shared street)」や「ダイバーター(diverter)」を好む人は、費用負担に前向きでした。つまり、整備方法に対する「好み」と、その実現に向けた「費用負担の意思」は、必ずしも一致しないことが分かりました。  

研究の意義

本研究の特徴は、生活道路の安全対策について、住民が「どの整備方法を好むか」だけでなく、「その実現のためにどの程度の費用負担を受け入れるか」をあわせて捉えた点にあります。両者が必ずしも一致しないことを示したことで、住民の選好だけでは把握しにくい政策への支持のあり方を明らかにしました。 
こうした知見は、限られた予算や道路空間のなかで、交通静穏化の整備内容や優先順位を検討する際に、整備方法に対する住民の選好と費用負担に対する考え方をあわせて考えるための手がかりとなります。また、住民参加による道路整備や、費用負担を伴う安全対策の制度設計への応用も期待されます。  

掲載誌の概要

Transportation Research Part A, Impact Factor 7.2, CiteScore 12.1