経済学部

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20160728セミナー報告

第4回リスク研究センター主催セミナー
リスク研究センター計量セミナー兼ミクロセミナー


リスク研究センターでは、平成28年7月28日(木)、Arthur Viianto LARI教授をお迎えして、計量セミナー兼ミクロセミナー
を開催いたしました。

  日 時:平成28年7月28日(木)11:00~12:00
  会 場:滋賀大学 545共同研究室(ファイナンス棟5F)
  演 題:『 Individual Human Development Indicator Measurement for Guanajuato State Education 』
    -グアナファト州教育に関する人間発展指数の個人レベルでの測定-
 講 師:Arthur Viianto LARI 氏(グアナファト大学 教授)

講演概要

講師の紹介

 ラリ(LARI, Arthur Viianto)氏は、グアナファト大学(メキシコ)経済学部教授である。グアナファト大学は滋賀大学の協定校の一つであり、毎年、教員の派遣交換、学生の交換留学、スペイン語・メキシコ文化の短期研修を実施しており、他の協定校と比べて緊密に国際交流を展開している。その一環として、ラリ氏は現在、本学の客員教授を務めている(2016年6月~2017年1月)。ラリ氏の関心領域は広く、環境、エネルギー、教育などに関する経済分析となっており、そのアプローチも計量経済学的手法から実験的手法、シミュレーション手法と幅広い。国際学術誌掲載の論文も多数ある。

講演内容の紹介

 今回、ラリ氏には「メキシコのグアナファト州内の市町村レベルを対象に、人間開発指標(The Human Development Index)を用いて実施した、教育面の格差に関する計量経済学的分析」について講演していただいた。個人レベルの人間開発指標データを活用して、市町村レベルの空間統計分析をおこなっている。ただし、個人レベルの人間開発指標データの整備自体が非常に新しい取り組みであるため(通常、人間開発指標データは国レベルで整備されている)、分析し尽した結果を紹介していただいたというわけではなく、発展途上の最先端研究の一端をご披露いただいたという性格のセミナーとなった。
 実際、人間開発指標は大きく3つの指標、所得水準(通常、一人当たりGDP)、教育水準(通常、就学率)、健康水準(通常、平均余命)から構成されるが、一人当たりGDPについては世帯所得データで、健康水準については個人データではなく地域データで代用しているのが現状である。他方、教育水準については、ローカルな学校制度の変遷に配慮しながら年齢別に就学率(就学年数割合)をカスタマイズして計算し、他の2指標と比べてかなり精緻にデータを計算している点には注目したい。この点がラリ氏の研究の大きな貢献ということになるだろう。
 最初に、教育水準の高さは年齢と明確に反比例していることが示された。このことは学校制度や政策の変遷の影響を顕著に受けているわけだが、若年層の教育水準の方が高いことを考えれば、望ましい状況にあると言える。というのは、このことは将来に向けて教育水準の改善が進んでいくことを意味しているからである。実際に、ラリ氏が示した将来予測データを見ても、その改善傾向ははっきりしている。
 このセミマクロのデータ分析に続き、グアナファト州内の市町村レベルで分けて、都市化レベル(人口密度で測定)や州予算の分配割合などの他のデータの地理的分布と比較しながら、教育水準の地域間格差を地図上で明確に示しながら分析的な議論が行われた。面白いことに、教育水準の地域間格差は所得水準や都市化レベルの地域間格差とは関係がなかったのである。
 では、教育水準の地域間格差は何によって説明されるのだろうか。いくつかの考えられる要因が挙げられた。たとえば、移民、インフォーマルセクターの労働や子供の労働、教育年数ではなく教育内容の質の低さ、10代の妊娠の多さ、暴力などである。しかし、地理的データとしてまだ十分に整備されていないということもあり、この点については今後の課題として残っている。これらの分析は非常に興味深く、今後の研究成果が期待される。
 最後に、本講演内容について、根本的に不明な点も残っている。人間開発指標は、所得水準、教育水準、健康水準の3つの指標を統合化した「複合指標(composite index)」であり、その指標の背後には哲学として「弱いサステイナビリティ(weak sustainability)」がある。弱いサステイナビリティのもとでは、異なる種類の資本(物的資本、人的資本、社会資本、自然資本)の間で、資本は代替可能であると考え、サステイナビリティの評価の際に質的に異なる種類の指標間での相殺を許すことになる。たとえば、仮に教育水準が低くても、それを大きく上回る所得水準が確保できるならば、トータルとして人間開発指標は十分に高く評価され、問題は無いと考えることになる。ラリ氏の本研究では、教育水準は他の指標では代替できない重要な指標として取り上げられているが、なぜ、教育水準指標を人間開発指標という複合指標の中の一つの指標として取り扱う必要があるのかがよく分からないのである。本研究の教育水準を捉える価値観から考えれば、弱いサステイナビリティに立脚する複合指標の採択は回避されなければならないのではないだろうか。

セミナーの様子

 試験期間中であったが、本学の教員5人と学生7人が出席し、盛況なセミナーとなった。講演中の質問を許可したことから、全て英語によるセミナーであったにもかかわらず、教員だけではなく学生からも公演中に質問が飛び出し、活気のある討論となった。講演後の質問時間についても、まず学生2人から本質的な質問が飛び出し、それらを皮切りに時間切れになるまで、6人程度から質問が出た。そして、この良い雰囲気をそのままに、ラリ氏と一緒に、教員3人、学生3人の合計7人で、彦根城外堀前のカフェにて、楽しいランチのひとときを過ごした。
(文責:滋賀大学 国際センター教授 森宏一郎)

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