日 時:平成28年10月13日(木)17:00~18:00 会 場:滋賀大学 彦根キャンパス内(詳細後報) 演 題:『 The Effects of Diagnostic Definitions in Claims Data on Healthcare Cost Estimates: |
講演概要
近年、日本では有効性は高いが高額な医療サービスの増加による医療保険財政への影響が懸念され、医療サービスの経済評価の必要性が高まっている。新たな医薬品や医療機器等の保険適用や保険価格の評価を費用対効果の観点から行うため、厚生労働省は2016年より「費用対効果を勘案した診療報酬制度」を試行的に導入している。C型慢性肝炎や悪性黒色腫等の様々な疾病に処方される新薬に対して、費用効果分析や費用効用分析等による経済評価が行われている。
新薬などの医療サービスの経済評価には、疾病にかかることによって発生する医療費(疾病医療費;Healthcare Cost)の正確な把握が必要となる。本講演では、九州大学大学院医学研究院の福田治久氏により、(1)疾病医療費の測定方法、(2)活用可能な医療費データ、(3)標題の研究内容の紹介が行われた。
(1)疾病医療費の測定方法では、診療行為積算法と傾向スコアマッチング法、回帰分析法(線形最小二乗法や一般化線形モデル)の実施手順や実施例が紹介され、各方法の利点と欠点が解説された。(2)活用可能な医療費データでは、厚生労働省や医療保険者が管理している医療費データベースが紹介され、各データベースから取得できる医療費(レセプト)データの特徴や分析する際の留意点について、詳細な解説が行われた。(3)標題の研究内容の紹介では、健保組合加入者である約14.2万人の糖尿病患者の医療費パネルデータ(平均50ヵ月間)を用いて、糖尿病の定義の違い(糖尿病疑いの症例を含むか、服薬歴ありの症例に限定するか等)によってその患者当たり医療費が大きく異なることが発表された。
最後に、大規模医療費データを用いて医療の経済評価等の政策研究を行う人材が不足しているため、より多くの経済学者が当分野の研究に参入して欲しいという言葉で講演は締めくくられた。本学は、来年度にデータサイエンス学部の開設を控えている。当日は、大規模医療費データの利活用について経済学部とデータサイエンス学部の両関係者により活発な意見交換が行われ、大変盛況なセミナーとなった。(文責 経済学科准教授 佐野洋史)
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