経済学部・大学院経済学研究科

経済学部・吉田裕司教授と富山大学翟唯揚助教(滋賀大学博士号)の研究論文 「Can exchange rate pass-throughs be perverse? A robust multiple-prior Bayesian SVAR approach」 が、Journal of International Money and Financeに採択されました。

photo

 研究背景は、以下の通りです。

 平成から続いていた長年のデフレ経済から脱却して、日本経済は昨年(2024年)からインフレを普段の生活でも実感するようになりました。と同時に円安が輸入価格の高騰をもたらすのではないかとメディアを賑わせていました。

 この研究論文はまだ日本で年率2%のインフレ率を達成できていなかった頃(2022年)に執筆されたものです。その時に既に先取りして、円安がインフレにもたらす影響を数値分析したものです。重要なポイントは円安は必ずしもインフレを引き起こさず、少なくとも2022年までは円安とデフレが同時に起きていたことを示しました。今後は、2024年以降の分析にも取り組みたいと考えています。

 この研究で用いた分析手法は、2022年に(計量経済学理論ではトップのジャーナル)Econometricaで提唱されたものをさらに発展させた分析手法です。あえて名称だけを出すと、「ナレティヴ符号制約下の頑健的マルチ事前分布ベイジアン構造VAR(ベクトル自己回帰)モデル」です。この方法では、1セットの計算でも、コア16のCPUを用いても数日かかります。

 翟唯揚助教は滋賀大学経済学研究科で修士・博士号を2022年に取得後、富山大学にて教鞭を執っています。 

 ※この研究論文は、2022年3月24日に投稿した後、3人のレフリーから二回の改定要求を受けて最終的に2025年2月22日に採択されました。次の科研費( 19K01673, 20H01518, 22K18527, 23H00836)から研究支援を受けた研究成果です。また、滋賀大学の支援により誰でも無料でアクセスできるオープンアクセスになっています。

  論文リンク先: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0261560625000476?via%3Dihub