経済学部

TOP研究と社会連携経済学部研究情報滋賀大学経済学部学術後援基金助成による研究成果滋賀大学経済学部学術後援基金助成による研究成果H24 ≫ 公会計の概念フレームワークに関する研究

公会計の概念フレームワークに関する研究

会計情報学科 准教授 山田康裕
 本研究は,制度形成の心理的側面に着目し,会計制度の形成に関わる問題,とりわけ国際会計基準審議会による国際財務報告基準の設定上の問題を考察することを目的としたものである。
 制度は,主体の主観が共有されることによって形成される。このような制度の相互主観の形成のされ方,換言すれば主観の共有のされ方は,国によって差異がある。たとえば,わが国においては,法は守らなければならない義務として観念されている。これに対して西洋においては,法は自らを守る権利として観念されている。
 日本においては義務本位の規範意識であるが故に制度は与えられるものと捉えられ,政府などによって定められた規範を受動的に共有することによって相互主観が形成されると考えられる。これを会計制度に敷衍するならば,わが国では,基準設定主体が設定した会計制度を受け入れ,それを遵守することに専らの関心が向けられると解釈されるのである。これに対して,西洋では権利本位の規範意識であるが故に制度は自ら作るものと捉えられ,自らの規範を他者と共有するように能動的に働きかけることによって相互主観が形成されると考えられる。これを会計制度に敷衍するならば,西洋では,会計制度の設定プロセスに積極的に参加し,自らに有利な制度を実現することに専らの関心が向けられると解釈されるのである。
 概念フレームワークや会計基準を設定する上でのデュー・プロセスにおけるコメント・レターは制度を権利と捉える思考を前提としており,義務と捉える思考をも つ国に対してはうまく機能しない恐れがある。かかる問題を解決するためには,制度を義務と捉えるのではなく権利と捉えるように発想の転換をおこなうこと以外に,義務と捉える国の意見を聞く機会を設けること(公聴会や個別交渉)が考えられる。
 なお,かかる成果は以下のように公表された。
山田康裕「会計制度の形成への関わり方を巡って」
 『企業会計』第65巻第1号,2013年1月,80-85頁。

研究成果一覧のページに戻る