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会計不正リスクに対する監査人の対応

准教授 笠井 直樹

 本研究の目的は,国内外の会計不正事例や先行研究に基づき,会計不正リスクに対する監査人の対応について,その実態および問題点を検討することである。
 財務諸表監査プロセスにおいて,監査人は限られたリソース(人的資源および監査業務に割り当てる時間等)に基づき,被監査企業における重要な虚偽表示が発生する可能性を的確に認識し,それに対応した手続を効率的に設計・実行することが求められている。近年,わが国を含め多くの国々において定期的に発生している会計不正事件をふまえ,被監査企業における会計不正リスクに対する監査人による対応の問題が注目されている。
 まず,会計不正リスクに対する監査人の対応の実態を明らかにするため,過去に発生した複数の会計不正事例に注目し,特に,監査人の監査判断の観点から分析を行った。会計不正事例における監査判断の実態を確認できる国内の資料は極めて限られていることから,複数の事例を分析するために,監督当局による監査人の摘発事例として詳細な情報が公開されている(会計・監査執行通牒として開示)アメリカの事例を取り上げることとした。
 分析対象となった事例において,典型的なものとして,個人および中小規模の監査事務所が監査を担当したケースでは,会計不正リスクの評価が適切に行われず,実施すべき監査手続を行っていなかったパターンが多く,その背景には監査人個人の職業的専門家としての能力・経験の問題だけでなく,監査事務所の品質管理自体にも大きな問題を抱えている傾向が明らかとなった。また,大手の監査事務所が担当した場合においても同様の傾向が確認されたが,大手の場合は現場の監査担当者の能力・経験の不足が問題であったケースが多かったため,現場レベルでの人材配置の問題が一つの重要な論点として判明した。他にも,会計不正リスクが高い被監査企業に対して,リスク評価が適切に行われていたにもかかわらず,実施すべき監査手続が行われていなかった事例も確認できた。これは,会計不正リスクの評価とその対応が適切にリンクしていないことを示しており,監査実務に対する重要な示唆が得られた。
 こうした会計不正リスクに対する監査人の対応に関する国内の実態を会計不正事例から検証することは難しいが,アメリカのケースを用いた事例分析や国内外を対象とした実験研究等における議論をとりまとめ,2026年度中に論文として公表する予定である。同様の論点を取り上げた研究は国際的にも進展しておらず,今後その研究成果の蓄積が進んでいくことが予想される。今後の科研費申請も含め他の研究助成を利用し引き続き関連プロジェクトを継続していく予定である。

結果発表

結果発表の時期 2026年4月〜2027年3月
結果発表の方法 2026年度中にワーキング・ペーパー,学術雑誌等において公表する予定


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