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ヘミングウェイの詩における日本、および、ヘミングウェイとパウンドにとってのヴェニス

社会システム学科 教授 真鍋 晶子
 2014年6月22日から27日、イタリア、ヴェニス、ヴェニス国際大学で行われた学会、16th Biennial Hemingway Society Conferenceのシンポジウム“Japanese Esthetics in Hemingway”(「ヘミングウェイにおける日本の美学」)で、”The Influence of Kyogen and Haiku on Hemingway’s Poetry”(「ヘミングウェイの詩への狂言と俳句の影響」)という論文を発表行い、また同時に、第一線で活躍する世界各国の研究者と意見交換、交流を行いました。学会の研究発表者は250名を越え、研究発表やシンポジウムに加えて特別講演や、ヴェニスや近郊のヘミングウェイゆかりの地を巡る企画など、盛りだくさんな内容を1週間でこなすため、連日朝7時45分あるいは8時30分から開始されました。会場の大学は、大抵の参加者が宿を取っていたヴェニス本島とは離れたサン・セルヴォロ島に位置しており、サン・マルコ広場近くの船着き場から10分ほど船に乗る必要がありました。さらに、その船の本数も少ないという不便さにも拘らず、会場は常時参加者で溢れて、熱気に満ちていました。私は既存研究がほとんどないヘミングウェイの詩を扱い、それを日本の美学、特に俳句と狂言に結びつけました。これは、ヘミングウェイ研究、さらにはアメリカ文学研究に未知の領域を切り開くこととなりました。私が発表を行ったシンポジウムはアメリカ、スペイン、日本からの発表者6名で構成され、2つのセッション(6月26日9時半から11時と、27日10時15分から11時45分)に分けて、行われました。このシンポジウムの意義が大きかったとの判断に基づき、企画者である、スペイン、サラゴサ大学のBeatriz Penas Ibanez教授と私の二人が編集者となって、書物を出版する計画を現在進めています。
 ヘミングウェイとその文学上の師であり、生涯の友人であったエズラ・パウンドにとってヴェニスは重要な土地でした。二人が現実に辿った足跡や、二人の作品に現れる土地に実際に足を運んで、資料蒐集し、また、場の空気を感じ、香りを嗅ぎ、音を聞き、その土地の「霊」のようなものに身をゆだねることで、彼の地を実感しました。ヴェニス本島のみならず、パウンド最晩年の作品に楽園イメージのひとつをゆだねられる初期キリスト教教会があり、ヘミングウェイが鴨猟に通ったトルッチェロ島やパウンドの墓のあるサンミケーレ島等を、作品、伝記、書簡、地図を導き手に、時間が許す限り歩き回りました。
 また、学会の主催者が企画した小旅行で、ヘミングウェイが第一世界大戦で瀕死の重傷を負ったピアーヴェ川のほとりや、ヘミングウェイにもパウンドにも極めて重要な貴族イヴァンチッチ家の別荘を、ヘミングウェイやパウンドとの交流があったジャコモ・イヴァンチッチ氏の案内で訪れるという貴重な機会も得ました。(イタリア外務省に努め大使を歴任し、今は公務から退かれている高齢のイヴァンチッチ氏は、帰国後も、下に述べた本の執筆に当たって、貴重な事実や史料をemailで提供し続けて下さいました。)
 帰国後、今回の体験に基づき『ヘミングウェイとパウンドのヴェネツィア』を今村楯夫東京女子大名誉教授と共著で執筆。2015年1月に、彩流社のフィギュール彩シリーズ第26巻として出版しました。
 また、シンポジウムの企画者、Ibanez教授は、2015年2月25日から27日、サラゴサ大学において、学会 “Japan and the Individual: A Multidisciplinary Comparative Analysis”(「日本と個:多様な学際的比較分析」)の企画運営の中心人物でした。彼女は、ヴェニスでの私の発表を評価し、サラゴサ大学での学会の発表者として、招聘してくれましたので、2月スペインに赴き、サラゴサ大学で本発表を発展させた学会発表を行いました。


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