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《経営とことば研究会》職場のコミュニケーションと生産性

井上逸兵(慶應義塾大学文学部教授)

 本研究会は、経営学研究とコミュニケーション論やオノマトペ・音象徴研究を中心とした言語学研究の交流の場を提供し、学際的・創発的研究を促進することを目的として今年度発足させたが、第1回として、コミュニケーション論がご専門で、複数の企業の顧問としてコミュニケーション問題や人事問題に関わっておられる、慶應義塾大学文学部教授の井上逸兵先生にお越しいただき、専門科目「言語学」の授業の時間帯でご講演いただいた。1コマ90分間お話しいただくことになり、内容も多岐に渡るため、ここでは大筋の内容についてご報告したい。

 コミュニケーションにおいては言葉の命題的意味(コアの情報)だけでなく、一見随意的なものに見えるが、解釈の枠組みを与えてくれるシグナル(定型表現・イントネーション・メールにおける絵文字など)も非常に重要な役割を果たしており、これらを正しく受信できないと致命的なミスコミュニケーションを引き起こしてしまう。また逆に、そのようなシグナルをあえて意図的・選択的に用いることで、相手の解釈を誘導することも可能になる。ところがコロナ禍になり、教育現場や職場でもネットを通じてやり取りを行うことが増大したが、対面ではないため上記のシグナルが上手く送受信できないこともあり、コミュニケーション不全も多くなってしまっている、ということが示された。ただ、最近になって、企業もコミュニケーションとコラボレーションの関連性に注目し、精緻に分析するようになってきており、他者への共感や心遣いを生み出すコミュニケーション要素が仕事の生産性につながることが分かってきた、という分析結果も紹介された。

 学生にも理解できるよう、専門用語を使いながらも豊富な具体例を提示し、ユーモアも交え分かりやすく説明してくださったので、コミュニケーション理論に興味を持った学生も多かったようだ。多彩な科目を提供している本学部にとって、社会科学と人文科学のつながりについて具体的に意識できる、有意義な講演になったと思われる。

(出原健一)

講演会の様子
講演会の様子

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