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報告《ものひと地域研究会》ギフトエコノミーのまち オーロヴィルからダーナビレッジへ

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日  時: 11月11日(金) 12:50~14:20

場  所: 第3講義室(校舎棟1階)

報告論題: ギフトエコノミーのまち オーロヴィルからダーナビレッジへ

報 告 者 : 小川美農里(ダーナビレッジ代表)

開催様式: 対面とZoomの併催


講演報告

 人生の中で、トウキョウやニューヨークという都市の名前を一体我々は何回聞くだろうか。それに比べると、オーロヴィル(Auroville)という街の名前を聞いたことのある人は少ないだろう。あるいは一度も聞かずに人生を終える人も多いのではないだろうか。

 インド南部タミル·ナードゥ州の都市ポンディシェリの近くにあるオーロヴィルは、しばしば「世界最大のエコビレッジ」と形容されるが、実際は国籍や宗教、人種に捉われず、インド人の思想家シュリ・オーロビンド・ゴーシュの思想を基盤として形成された実験都市である。オーロビンドの弟子であったフランス人女性のミラ・アルファッサによって1968年に設立された国際的な人工都市であり、2022年8月現在の人口は約60カ国3200人(周辺を含めるともっと多数)が暮らしているという。

 今回のワークショップでは、オーロヴィルに2014年から2年ほど滞在し、現地で有機農業やホリスティック医療を学んできた小川美農里さんにお越しいただき、オーロヴィルについてお話を伺った。

 小川さんによれば、オーロヴィル(以下AVと略す)にはオーロヴィル憲章というものがあり、①AVは住民のみではなく、全世界に帰属している、②AVは常に進歩し続ける終わりなき教育の場である、③AVは過去と未来世代の架け橋となり、将来の計画実現のために飛躍し続ける、④AVは人類共同体実現のための物質的・精神的な研究の場である、という4つの理念のもと、人々が生活を行っている。そこでは資本主義を否定はしないものの、共産主義的な特徴もとりいれた「コレクティブ・エコノミー」を展開しており、150以上のビジネスがあり、30%以上の売り上げをAVに還元しているという。また、芸術やアートも重視されているという。

 組織や社会を統合的(ホリスティック)に捉えるフレームワークとして「インテグラル理論」というものを生み出したケン・ウィルバーはオーロビンドのインテグラル・ヨガに影響を受けたという。そして、現代資本主義社会で注目されている「ティール組織」を提唱したフレデリック・ラルーはそのインテグラル理論を基礎にしているといわれる。つまり、トウキョウやニューヨークの企業などで今注目されているティール組織の源流が、ほとんどの人が聞いたこともないインドのオーロヴィルと結びついていると知ることはどこか痛快でもあり、とても興味深い。

 講演会では引き続き、小川さんが福島県西会津で主宰されているダーナ・ヴィレッジという農業を中心としたコミュニティについてもお話を伺った。遠回りのようではあるが、いろいろな社会問題の解決にはまずはそれぞれの人が自分らしく生きられることが必要であり、小川さんは農業を通じてそれが実現されると考えているという。

 「労働して賃金を稼ぎ、対価を払って商品を手に入れる」というコチラ側では当たり前のことが、アチラ側では必ずしも普遍的ではなく、相互に補完しあうものであるということを改めて知ることができた。

(中野 桂)

講演会の様子
講演会の様子


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