報 告 者 : 株式会社おおまえ 社長 大前清司さま ・ 水谷真也さま
報告論題: 柿渋染めの+Value
日 時: 6月27日(月) 12:50~14:20
場 所: 大合併講義室(彦根キャンパス)
講演報告
今回の「ものひと地域研究会」は、東近江市能登川の株式会社おおまえの大前清司社長と従業員の水谷真也さんにお越しをいただいて、「柿渋染めのPLUS VALUE」としてお話いただいた。
柿渋染めとは、渋柿を熟成発酵させて作る柿渋をつかって、染色を行う技術のことであり、すでにその技術は1000年以上前からあるといわれる。柿渋には防腐、防⽔、防⾍、消臭、抗菌、耐久性向上などの効果があるとされる一方で、化学染料とは異なり自然環境への負荷も少ないと考えられる。
おおまえは、東京などに出向いてブランドメーカーとのコラボ商品の開発などもおこなっている。しかし、そうしたハイブランド・ラグジュアリーブランドの商品ばかりではなく、定番ものの商品に柿渋で付加価値をつけ、多くの方々に手に取ってもらうことによって、柿渋染めという仕事自身が持続可能になると考えているという。
本講演会では柿渋染めの工程・技術やその高付加価値性についても大変興味深かったが、会社をたたむことを考え始めていた大前社長のもとに、能登川出身で東京の大手アパレルメーカーで18年間働いていた水谷さんが1年前に飛び込んで、二人三脚となって新たな挑戦を繰り広げている「物語」そのものにも興味をひかれた。
水谷さんが入社して作ったものの一つに会社のフィロソフィーがある。「地球に与えてきた負担やストレスを少しでも浄化させていくこと。地球にも人にも優しい、消費・生産・流通の流れを構築すること。」「自然の恵みを活かし活かされたものづくりを。利は元にあり。作り手同志が喜べる関係づくりを。創造的に発展させるものづくりを。」というものである。社長が自ら実践してきたことを、水谷さんが言語化したものと言えるだろう。
水谷さんは、東京に出たときは東京はおしゃれな人が多くて、仕事もできる人が多いというイメージであったが、18年間東京にいて刺激は徐々になくなり、自身が成長できているのかどうかと思い始めていたという。1年前に滋賀に戻ってきて、自分と同じUターンしてきた人や仕事を頑張っている人に次から次へと出会うことが出来て、実は自分が若いころ憧れていた東京の環境がここにあったと感じているそうだ。「ここにいたら勉強できるな、成長できるな、熱くなれるなと今感じている」と語られたことが印象的だった。
お二人のものづくりがどのように、人づくりや地域づくりにつながっていくのか、楽しみに見守っていきたいと思う。
(中野 桂)
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