報 告 者 : 中山郁英(一般社団法人滋賀人・理事)
報告論題: 行政とデザイン
日 時: 6月21日(月) 12:50~14:20
場 所: 第6講義室(彦根キャンパス校舎棟1階)
企業等において、デザイン思考が注目をされているが、行政においてもデザインあるいはデザイン思考の必要性が高まってきている。今回のワークショップでは、大手自動車会社や外資系コンサルティング会社、東京大学 i.schoolスタッフを経て、現在、長浜市を拠点として活動している一般社団法人滋賀人理事の中山郁英さんに「行政とデザイン」というテーマでお話いただいた。ちなみにアンドレ・シャミネー 著「Designing With and Within Public Organizations: Building Bridges between Public Sector Innovators and Designers」という書籍が「行政とデザイン」という邦題で2019年に日本で出版されており、中山氏はその翻訳版に寄稿もされている。
中山氏によれば、自治体職員の数は平成6年から30年にかけて16%減少しており、最近の総務省の研究会でも2040年までに今の半分の自治体職員数で業務を回せるようにしていかなければならないという提言がなされているという。
その上で、自治体は地域における最大の「事業者」であり、その予算をいかに効率的に執行するかは今後ますます重要となる。
デザイン思考を使った行政革新(public sector innovation)については、2010年前後から本や論文が出てくるようになってきており、欧米が早くから取り組んでいる。
いわゆるパブリック・イノベーション・ラボと呼ばれるものが世界に100以上あるが、中でもデンマークのMindlabは3つの省庁が協働して2002年に設立されている。また、2011年には、民間ではあるが、アメリカのニューヨークにPublic Policy Labが、そして、2014年にはイギリスの内閣府の中にPolicy Labが設立されている。
日本でも中央省庁では経済産業省が中心となって、サービスデザインのガイドラインを作ったり、デザイン経営宣言なども行っている。神戸市や市川市でデザイン人材(クリエイティブ枠)を雇用するなど地方自治体での取り組みも始まっているという。
日本経済の長期的停滞の背景には、デザインや音楽などアートにかかわる人材の育成の遅れがあると思う。最近になってようやく注目が集まってきているようだが、必要なのは教育現場での意識の転換だと思う。今回の講演会はそのようなことを改めて気づかされるものであった。
(中野 桂)
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