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▷未来社会研究プロジェクト「発達障害を抱える人材の経営活用」

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講演概要

 世界の著名な起業家(例えば、IKEAの創業者イングヴァル・カンプラードやKinko'sの創業者ポール・オーファリー)が、実は発達障害であったことが近年知られるようになってきた。一見、起業プロセスには否定的に見える障害に伴う認知の偏り(発達障害/ADHD傾向)が、なぜ、どのようなプロセスで、肯定的に変化するのか。そこにはどのような条件が介在するのか。近年、アントレプレナーシップ研究領域において、急速に発達障害傾向と起業行動の関係研究が進むが、そのプロセスの解明は未だ途上にある。

 本講演会では、こうした研究の動向や論点を紹介しつつ、日本をフィールドとした講演者自身の中間的研究成果にも触れながら、発達障害とアントレプレナーシップの関係について、参加者の皆様とともに考えていきたい。


講演報告

 今回は、滋賀大学経済経営研究所の未来研究部門のひとつの柱である「発達障害を抱える人材の経営活用」をテーマとした第1回目のセミナーとなりました。講師である大阪経済大学経営学部教授の江島由裕先生のご専門はアントレプレナーシップ論ですが、近年、この分野では、発達障害を抱える人材と起業との関係が注目を集めています。今回のセミナーでは、その最新の研究動向をご紹介下さると共に、江島先生が現在着手しておられるご研究についても、発表いただきました。

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セミナーの内容

近年、アントレプレナーシップ論において、発達障害が学術的議論の遡上に上る理由は、著名な企業家が発達障害の傾向を持つことが広く知られるようになったからです。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ、IKEAの創業者であるイングヴァル・カンプラード、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ等がその代表例だと言われています。このようなテーマはこれまでジャーナリスティックな取り扱いが中心でしたが、江島先生は、アカデミックなアプローチで、この問題に接近されました。

発達障害とは何か?論者によって多くの定義がなされているが、一般的には本来であれば、みにつくはずの社会性やコミュニケーションスキルなどが、脳の発達の偏りにより不得手になることから発生すると言われています。具体的にはADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉症スペクトラム)、SLD(限局性学習症)などが含まれます。江島先生はその中でもADHDに注目し、議論を展開されました。ADHDにも様々な特徴がありますが、大きく3つの特徴があると言われています。衝動性、多動性、不注意です。この場合、ADHDを抱える人材の以上の特徴が、起業家行動特性とどのような関係があるかが探求されました。

 例えば、ADHDと起業家的意図ならびに自営業の選択に正の相関があることやADHDの衝動性や多動性が起業家的特性(革新性、先駆性、リスク志向)と正の相関があること、逆に不注意は負の相関があること等、様々な先行研究の結果に基づいて、ご紹介されました。更に、ADHDを持つ日本の起業家14名をサンプリングしたご自身の調査結果についても議論がなされ、資質論、P-Eフィット、パレーシア、解放アントレプレなリング等の視角から今後の研究をどのように発展させていくべきかという指針を展開されました。

 この分野は世界的にみても注目されつつある分野であり、未来研究部門にとっても意義深い講演会となりました。

(文責 企業経営学科 准教授 柴田淳郎)


本講演に関するご質問は

滋賀大学経済経営研究所
TEL : 0749-27-1047
FAX : 0749-27-1397

E-mail:ebr@biwako.shiga-u.ac.jp までお願いします。