経済学部

TOP経済経営研究所(ebrisk)■未来社会研究未来パラダイム班 ≫ 未来社会研究プロジェクト「ポストコロナの経済社会と人文社会科学」第3回セミナー(20210310)

未来社会研究プロジェクト「ポストコロナの経済社会と人文社会科学」第3回セミナー(20210310)

  • 日時:2021年3月10日(水)14:00~15:30

  • 演題:不平等是正の経済財政政策をめぐって-A.B.アトキンソンの提案とベーシック・インカム論を中心に-

  • 開催場所:滋賀大学経済学部 士魂商才館3Fセミナー室Ⅱ ※オンライン同時開催も行いました。

  • 講演者:北村裕明(滋賀大学特任教授)


    ご経歴

    1953年生まれ。専門は財政学、地方財政論、地域政策論。

    京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。京都大学博士(経済学)。

    滋賀大学教授、経済学部長・研究科長、理事・副学長などを歴任。

    主な著書に『現代イギリス地方自治の展開─サッチャリズムと地方自治の変容─』(共編著)、『現代イギリス地方税改革論』、『現代社会と非営利組織』、『地域プロデューサーの時代』など


開催報告

 経済経営研究所のアドバイザーに就任いただいた先生方によるセミナーの第3回目は、旧リスク研究センターの創設に貢献された北村裕明先生である。ご講演のテーマは、不平等是正の経済財政政策であり、アンソニー・アトキンソンの『21世紀の不平等』における政策提案の趣旨と特徴についての評価が取り上げられた。

 不平等に関する精緻な実証分析に基づくアトキンソンの提案は、ラディカルではあるがバランスがとれたものであり、今後の不平等是正策の枠組みを議論する場合の参照標準を与えると評価された。それは、労働市場と資本市場の改革により市場所得の改善を図ると同時に、税制改革と社会保障改革を包括的に議論するものである。特に興味深いのは、ベーシック・インカム的な普遍的現金給付を社会保障改革の柱に据えていることであって、それは普遍的児童手当、成人時の資本給付、参加型所得から構成される。ちなみに、社会保障改革の焦点が所得維持に限定されるのはイギリス的であって、教育や子育て支援などのサービスは取り上げられていない。以上のような議論からは、ベーシック・インカムをどのような再分配政策の中に位置づけるのかという重要な課題が見えてくる。

 なお、アトキンソンが提案している成人時の資本給付の源泉は、トマス・ペインの『農地上の正義』にあるが、北村先生の研究者としての最初の仕事は、まさにそのペインの財政民主主義である。ペインは土地の占有を批判し、ロック的な意味での自然権の回復のために、基本地代による資本給付を構想したが、動産の占有にも注目し、社会基盤への権利の回復にも配慮していることなどが紹介された。

 講演後の質疑応答では、河上肇の『貧乏物語』とアトキンソンの対比、わが国保守政権における再分配政策(大平内閣の特徴)、これからの年金制度改革の方向性、児童手当の所得制限導入の意味、第1回セミナーでの佐和先生のベーシック・インカムへの批判的評価との対比などが議論された。

(経済経営研究所 所長 吉川英治)


講演会の様子
講演会の様子

本講演に関するご質問は

滋賀大学経済経営研究所
TEL : 0749-27-1047
FAX : 0749-27-1397

E-mail:ebr@biwako.shiga-u.ac.jp までお願いします。