経済学部

経済学部竹村幸祐准教授の論文が国際的学術誌「Journal of Personality and Social Psychology」に掲載されました。

<論文タイトルと著者>

  • タイトル:Farming cultivates a community-level shared culture through collective activities: Examining contextual effects with multilevel analyses
  • 著者:Yukiko Uchida, Kosuke Takemura, Shintaro Fukushima, Izuru Saizen, Yuta Kawamura, Hidefumi Hitokoto, Naoko Koizumi, and Sakiko Yoshikawa
  • 掲載誌:Journal of Personality and Social Psychology
  • 巻号:未定
  • ページ:未定
  • URL: http://psycnet.apa.org/doi/10.1037/pspa0000138

<論文概要>

1.背景

日本においては、他者からの評価を気にかけたり、調和を重視したりするような「相互協調性」が高いとされています。そのルーツは農業にあることが先行研究によって示唆されていますが、実際に「農業に従事すること」が重要なのか、あるいは「農業地域に暮らすこと」が重要なのかについては明らかになっていませんでした。また、日本の特徴ともいえる漁業に由来する心の性質が日本全体に広まっていない理由も明確ではありませんでした。

2.研究手法・成果

本研究では、西日本から農業地域、漁業地域、それ以外の地域からサンプリングされた408集落(規模は郵便番号レベル程度)を対象にした住民調査を実施しました。その結果、協調性(他者からの評価を懸念する性質)は、農業地域全体(非農業者を含む)でそのほかの地域よりも高いという傾向が見られました。
また、農業地域全体でなぜ協調性が高くなるのかを検討したところ、農業地域ではほかの地域よりも「地域活動」の参加率が高く、この参加率の高さが協調性を促進していることが示されました。農業地域、特に水田稲作がさかんな地域では、人々の大規模な協力関係が歴史的に必要とされてきたと考えられ、これが地域の伝統となり、現在に受け継がれていると考えられます。なお、地域活動の内容は、具体的にはお祭りや自治会活動に加え、防災活動、用水路清掃、冠婚葬祭などです。
漁業者(養殖業を除く)においては、ほかの業種の人たちよりも自尊心が高いという傾向が見られましたが、この心理傾向は漁村全体の特徴(非漁業者と漁業者双方でみられる特徴)ではありませんでした。
以上のことから、本研究では、地域の生業と地域活動の参加率とが、地域住民の心理に影響を及ぼすことが実証されました。

3.波及効果

協調性という日本で見られる心理傾向が、「地域における活動への参加率」と関わっていたことが見いだされたことは、今後の文化心理学研究の理論や方法について新たな知見を与えると考えられます。今回のプロジェクトでは、特に農村や漁村地域でのデータ収集が行われたことなどからも、これまでは主に国際比較が行われてきたこの分野における、地域比較の有効性の証左としての波及効果があると考えられます。