経済学部・大学院経済学研究科

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講演会「プリンシプル準拠の行政手法について-資本市場の規律づけを題材に-」

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  • 日 時:2025年1月14日(火)13:30-15:00
  • 表 題:講演会「プリンシプル準拠の行政手法について-資本市場の規律づけを題材に-」
  • 発表者:佐藤 隆文(元金融庁長官・元一橋大学大学院商学研究科(現 経営管理研究科)教授)
  • 場 所:士魂商才館3F セミナー室Ⅱ
  • 開催様式:対面

講演概要

「コーポレートガバナンス・コード」や「顧客本位の業務運営に関する原則」などの例に見られるように、近年は金融の分野を中心にプリンシプル・ベースの行政手法が広がっている。

その点を踏まえ、実定法等に基づくルール・ベースの手法との比較を含め、資本市場の話題を中心に、現況を概観する。


講演報告

本講演会では、佐藤隆文氏により、元金融庁長官で、一橋大学において教授も務められたご経験から、行政の視点並び専門的観点から、資本市場の規制の在り方に関する先端的課題についてご講演をいただいた。

 信頼性・利便性、また確かな価格発見機能を有する質の高い資本市場を実現していくことは、単に自由化による市場原理を信頼するだけでは達成できず、それを支える質の高い規律づけのメカニズムが必要となる。そのような規律づけは行政によるルールベースの規制に期待されてきた。しかしながら、ルールベースの規制は、ルールの持つエンフォースメント機能によるもので、実際に不公正取引や不適切事案の探知・特定・分析・是正・処罰という、事後的対応による規律づけとなる。また、ルールベースの規制は、その性質から明示性・透明性が求められるものであり、日々発展していく資本市場、そこにおける様々な新技術に対して、規制が追いつけないというような事態も想定されている。

 このようなルールベースの規律づけが有する課題を補うためには、それぞれの資本市場参加者が規範意識のもとに自律的にその行動を律していくこと、つまり行政による上からの規律づけだけではなく、市場参加者が自ら律する分権的規律づけの重要性が注目され、その普及・活用がすすめられるようになっている。このように市場参加者が、事前的に、分権的に自らを律する際の基準となる規範はプリンシプルと呼ばれる。プリンシプルは、ルールの背後にある質の高い市場形成するための規範的な目的であり、ルールよりも包含的なものとなる。

 ご講演では、ルールによる規律づけとプリンシプルによる規律づけの制度的な面での関係、長所短所の分析から、プリンシプル準拠の行政手法の性質、多様なプリンシプル準拠の行政手法の現状在り方、またその課題について、知見を展開いただいた。金融庁において、プリンシプル原理による規律づけ手法の導入を進められたというご経験を踏まえた明快なご講演は、参加者の資本市場に関する行政手法の理解を促すとともに、視野を広げる有意義な機会となった。改めて佐藤氏への感謝を記したい。

(文責:経済学部教授 小倉明浩)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

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