経済学部

経済学部竹村幸祐准教授の論文が国際的学術誌「PNAS」に掲載されました。

<論文タイトルと著者>

  • タイトル:Cross-cultural invariances in the architecture of shame
  • 著者:Daniel Sznycer, Dimitris Xygalatas, Elizabeth Agey, Sarah Alami, Xiao-Fen An, Kristina I. Ananyeva, Quentin D. Atkinson, Bernardo R. Broitman, Thomas J. Conte, Carola Flores, Shintaro Fukushima, Hidefumi Hitokoto, Alexander N. Kharitonov, Charity N. Onyishi, Ike E. Onyishi, Pedro P. Romero, Joshua M. Schrock, J. Josh Snodgrass, Lawrence S. Sugiyama, Kosuke Takemura, Cathryn Townsend, Jin-Ying Zhuang, C. Athena Aktipis, Lee Cronk, Leda Cosmides, and John Tooby
  • 掲載誌:PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)
  • 巻号:115(39)
  • ページ:9702-9707
  • URL: http://www.pnas.org/content/115/39/9702

<論文概要>

恥(shame)の感情は、誰しもできれば感じたくないような、ネガティブな感情です。しかし、この不快な感情にも意味があるという仮説を本研究は検証しました。 過去の研究によって、恥感情が生じるのは、自分に対する他者からの評価が低下する状況であることが示されていました。 これは、人間の感情を「環境に適応するためのツール」とみなすことで理解しようとする視座(進化心理学的観点)にとって重要な知見でした。 一人ひとりの人間にとって、自分が適応するべき環境とは、自分が住んでいる「社会」だと考えられます。社会とは、いわば、他者(たち)によって構成されています。 この環境で生き抜く(そして子孫を残す)上では、他者から否定的に評価されないことが重要になります。 そのため、一人ひとりの人間は、他者から否定的に評価されないように自らの行動を適切に調整する傾向を(多かれ少なかれ、そして意識的・無意識的に)身に着けていると考えられます。 そして、「恥」という感情は、そうした行動調整システムの一環だと考えることができます。 先行研究は、世界各地でデータ収集を行い、この仮説を支持する知見を得ていました(Sznycer et al., 2016)。
ただし、この先行研究でデータ収集の対象となったのは、主として欧米または欧米の影響を強く受けた社会でした。 上の仮説からは、人が住んでいる環境が「社会」である限り、どのような文化を持つ社会であろうとも、「他者からの評価が低下しやすい状況で恥を感じやすい」というパターンが生じるはずだと予測されます。 そこで本研究では、小規模社会でフィールドワークを行う人類学者を多く含む研究チームが、 より広範で多様な社会(エクアドル、チリ、モロッコ、ナイジェリア、ギリシア、ウガンダ、モーリシャス、ネパール、ロシア、モンゴル、中国、日本)でデータ収集を行いました。 その結果、一貫して、他者からの否定的評価と恥の感じやすさの間に正の相関関係があることが見出されました。 この知見は、地球上の多様な社会において、恥感情が他者からの否定的評価に敏感に反応するものであることを示しています。