経済学部竹村幸祐准教授の論文が国際的学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載されました。
【掲載ジャーナル】Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
【巻号】 115(33)
【ページ:】8322-8327
【URL】 http://www.pnas.org/content/early/2018/07/31/1808418115
【論文タイトル】Invariances in the architecture of pride across small-scale societies
【研究代表者】Daniel Sznycer (University of Montreal)
【内容】
過去の研究によって、「誇らしい」という感情(pride)が生じるのは、自分に対する他者からの評価が高まりやすい状況であることが示されていました。これは、人間の感情を「環境に適応するためのツール」とみなすことで理解しようとする視座(進化心理学的観点)にとって重要な知見でした。一人ひとりの人間にとって、自分が適応するべき環境とは、自分が住んでいる社会だと考えられます。社会とは、いわば、他者(たち)によって構成されています。この環境で生き抜く(そして子孫を残す)上では、他者から好意的に評価されることが重要になります。そのため、一人ひとりの人間は、他者からの好意的評価を引き出すように自らの行動を適切に調整する傾向を(多かれ少なかれ、そして意識的・無意識的に)身に着けていると考えらえます。そして、「誇り」という感情は、そうした行動調整システムの一環だと考えることができます。先行研究は、世界各地でデータ収集を行い、この仮説を支持する知見を得ていました(Sznyceret al., 2017)。
ただし、この先行研究には大きな限界がありました。それは、データ収集の対象となったのが、主として欧米または欧米の影響を強く受けた社会だけだった点です。上の仮説からは、人が住んでいる環境が「社会」である限り、どのような文化を持つところであろうとも、「他者からの評価が高まりやすい状況で誇りを感じやすい」というパターンが生じるはずだと予測されます。そこで本研究は、小規模社会でフィールドワークを行う人類学者を多く含む研究チームを構成し、より広範で多様な社会(ニカラグア、エクアドル、モロッコ、ナイジェリア、モーリシャス、ロシア、中国、日本)でデータ収集を行いました。その結果、一貫して、他者からの評価と誇りの感じやすさの間に正の相関関係があることが見出されました。