経済学部

彦根ゴーストツアー「黒い烏の章」を開催しました

 2011年12月3日(土)4日(日)「彦根ゴーストツアー:黒い烏の章」が、彦根観光協会主催、彦根市および滋賀大学経済学部協力の形で挙行されました。 これは本年9月20日経済学部で行われた、島根県立大学教授・小泉八雲記念館顧問小泉凡先生による講演 「城下町で文化資源を生かす!:松江ゴーストツアーと造形美術展の取組から」 の内容に触発され、滋賀大学経済学部、彦根市産業部観光振興課、彦根市民が協力して作り上げ、「びわ湖・近江路観光圏」の補助金を得て、成立したものです。 著作権の都合上、画像は保存できないようにしております

この講演は、小泉先生が松江で地域文化、特に未評価の文化を観光・地域振興に位置づける「文化資源」という考え方を活用されて、 ご本人の研究もとに着地型観光を成功させられた自らの体験を私たちにご紹介下さったものでした。 私たちは「空(くう)の旅人舎」を立ち上げ(経済学部真鍋晶子代表)、 滋賀大学教職員・学生のみならず、湖東湖北の文化資源を発掘されている北風冩真舘代表杉原正樹氏などの市民で、企画しました。五感を最大限に用い、 想像力と創造力を駆使することによって、土地のもつ文化・歴史的資源から得ることのできる「見えないモノ」を「ゴースト」と位置づけ、それらを感じ取り、 未評価の文化を紡ごうとする企画となりました。彦根市内と多賀町の様々な方々の協力なしでは成立しなかったもので、ツアーには20名あまりの参加者を得ました。
安政4年12月3日彦根藩の献立を体験  3日午後14時から、長久寺において松山住職から寺の歴史やいわれに関するお話を聞きながら、寺の位置する雨壺山を歩き、その後寺に伝わる「お菊の皿」を見学、 さらに、講談師旭堂南海師による講談「番町皿屋敷」を体験。彦根藩安政4年12月3日の献立を、花しょうぶ通り「魚浩」主人長田氏が『順会水屋帳』を研究の結果の再現されたもの体験した後、 同じく花しょうぶ通りの江戸時代以来の旅籠屋「とばや」において、狂言師松本薫師による「狂言における異界のもの」を聴講しました。狂言の舞台構造や演劇原理における「見えないものを見る」 仕組みや近江の異界の「精」を扱った狂言の演目、記紀の神々と狂言の繋がりなどについて、演技を交えて20時から22時まで講演されました。

「先喰烏(せんじきからす)」の儀式を見学  4日は朝6時から多賀大社において、禰宜による日供(にっく)祭、また、今回の「黒い烏の章」の興味の中心である、多賀大社に特有の「先喰烏(せんじきからす)」についての説明を受け、 これらの儀式を実際に見学、その後、7時半から、安土桃山時代に描かれた多賀大社の曼荼羅の実物を目の前に、木村宮司から、この曼荼羅について出版に向けての研究の成果を伺いました。 さらに、曼荼羅についての説明をうけて多賀大社をそれぞれに歩いたのち真如寺に移動しました。
真如寺の地獄絵を見学 ここには、廃仏毀釈で破壊された多賀大社内の全寺のなかの中心であった不動院から、藤原時代の阿弥陀如来はじめ様々なものが移動されているのみならず、 真如寺固有の所有物である地獄絵があり、住職夫人の説明により、他で学んだのとは別の観点から日本人のもつ宗教観・宇宙観・哲学を知ることになりました。 その後13時から、NPO法人彦根景観フォーラム所有の江戸時代の庄屋の家、一圓屋敷(多賀里の駅)で、小泉凡先生が「小泉八雲、異界への旅」と題して講演され、 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)における烏の重要性、さらには、アイルランドと出雲、松江における異界とハーンについて、柳田國男とハーンの関係を交えたりして、話されました。 中川信子さんを始めとする多賀クラブの方々のご協力も得ました。
 2日間かなりハードスケジュールでしたが、五感をもちいて想像力・創造力を研ぎすますと、何が生まれて来るかを実感し、自然と文化、そのなかにおける人間の役割や位置について深く考察することのできる2日間は、滋賀大学関係者、彦根市民、さらには他県からの参加者も含めて意見交換を行いつつ学ぶことのできる、生きた学びの場となりました。

経済学部教授真鍋晶子