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公開授業報告2010/6/15

リスク研究センターセミナー
滋賀銀行協力公開授業【第2回】報告

本学の専門教育科目「信用リスクマネジメント」(担当教員:原村健二)の授業の一環として、滋賀銀行より下辻篤氏をお招きしての特別講義が行われました。

尚、【第1回】の授業の様子は こちら をご参照ください。

【第2回】演題:「自己資本比率規制とオペレーショナル・リスク管理」
     講師:下辻 篤氏
          (滋賀銀行経営管理部リスク統轄グループ課長)
        1988年滋賀銀行入行、ALM室勤務などを経て現職
      日時:6月15日(火)14:30~16:00
         会場:講堂
司会・進行:原村健二准教授(本学経済学部)


セミナーの様子 セミナーの様子
セミナー風景
セミナー風景
下辻篤氏 司会の原村健二准教授
下辻篤氏
司会の原村健二准教授

【「自己資本比率規制とオペレーショナル・リスク管理」 講演概要】
はじめに、「リスク」とは「損失の発生する可能性」のことであり、リスクが大きいということは、「損失の発生する可能性が高い(多額の損失が発生する可能性がある)」こと、リスク管理とはリスクを、特定(Identify)、評価/測定(Assess/Measure)監視(Monitor)、制御/削減(Control/Mitigate)することであり、資本を超える損失が発生した場合、銀行は債務超過となって預金の払戻しに影響が出ることから、最悪の場合でも発生する損失(リスク量)を資本の範囲に抑える必要があるとの説明があった。
次に、滋賀銀行においては、2007年より導入されたバーゼルII(新しい自己資本比率規制)におけるオペレーショナル・リスク(金融機関の業務の過程、役職員の活動若しくはシステムが不適切であること又は外生的な事象により損失を被るリスク等)の計測手法として、監督当局の承認が必要な粗利益配分法を採用していること、それぞれのリスクカテゴリー(事務リスク、システムリスク、法務リスク等)に担当部署を決め、業務統轄部が管理しているという体制の説明があった。(なお、風評リスクは、リスクが顕在化した際の事後対応が重要であるとの認識もあり、同行ではオペレーショナル・リスク管理の対象とはしていない。)
また、同行の両替依頼票の事例をもとに、伝統的なリスク管理方法とともに、最近主流となっており、前述の粗利益配分法の承認要件でもある、オペレーショナル・リスクの特定、評価、把握等の手法として、損失データ(内部データ・外部データ)の収集・分析や現場の業務担当者による内在リスクの洗出しやリスクの自己評価を行う「CSA(Control Self-Assessment)」の手法の事例が紹介された。なお、「CSA」は、リスクの評価(Check)、対策の検討(Plan)、コントロールの改善(Do)というPDCサイクルとして活用できるメリットがあるものの、担当者の主観に依存しているため評価がぶれる、内在リスクを見逃す(漏れる)といった可能性があるという問題点も指摘された。また、同行ではデータの制約や対費用効果の観点から、オペレーショナル・リスク管理においては、メガバンクなどで実施しているVaR等によるリスクの計量化は行っていないとの発言があった。
最後に、「オペレーショナル・リスクやリスク管理に興味がある人は、自分で調べて勉強してほしい。例えば、(オペレーショナル・リスクの典型例として)多額の損失を出してベアリングス銀行を破綻させたニック・リーソン(英国人)氏の自叙伝などを読むのは面白いのではないか。」とのメッセージが伝えられ、セミナーは終了した。
なお、聴講者からは、「身近な事例での説明が多く、オペレーショナル・リスクの種類や全体像がよくわかった」「オペレーショナル・リスクの計量化やリスク管理自体はとても難しいことが理解できた」「リスク管理の重要性や必要性についての理解を深めることができた」等の意見が多く出された。
今回の講演の開催に対してご尽力いただいた滋賀銀行の関係者の方々、本学前理事の力石伸夫様及び経済経営研究所江竜美子様に対して、重ねて感謝の意を表したい。(本講演の参加者は約350名。)(文責 原村健二)

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