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公開授業報告2010/6/8

リスク研究センターセミナー
滋賀銀行協力公開授業【第1回】報告

本学の専門教育科目「信用リスクマネジメント」(担当教員:原村健二)の授業の一環として、滋賀銀行より安井進氏をお招きしての特別講義が行われました。

尚、【第2回】の授業の様子は こちら をご参照ください。

【第1回】演題:「地方銀行の市場リスク管理」 講師:安井 進氏        (滋賀銀行経営管理部・経済学修士)         2007年滋賀銀行入行、八日市東支店を経て現在経営管理部所属      日時:6月8日(火)14:30~16:00 会場:講堂
司会・進行:原村健二准教授(本学経済学部)


セミナーの様子
セミナーの様子
安井進氏 司会の原村健二准教授
安井進氏
司会の原村健二准教授

【「地方銀行の市場リスク管理」 講演概要】
はじめに、地方銀行は、顧客から預金を預かり(調達)企業や個人に配分(運用する)という間接金融(金融仲介機能)を通じた収益構造となっており、貸出金(運用)と預金(調達)のミスマッチにともなう金利変動による損失の可能性(金利リスク)や株価の変動による評価損の可能性(価格変動リスク)などの市場リスク(金利、為替、株式等様々な市場のリスク・ファクターの変動により資産・負債から生み出される収益が変動し損失を被るリスク)の管理の必要性が説明された。

次に、リスクとは、「損失」ではなく「損失の発生する可能性」であるとの説明の後、リスク管理のプロセスとして、特定(Identify)、評価/測定(Assess/Measure)、監視(Monitor)、制御/消滅(Control/Mitigate)のプロセスがあるが、滋賀銀行では、市場リスクの測定/評価において、勘や経験に頼らない合理的な尺度として、「BPV(Basis Point Value:金利が1%上昇時の現在価値の変動額)」・株価変動などの感応度や、過去の株価のデータを用いたヒストリカル法による「VaR(Value at Risk:一定の確率で一定の期間内に発生しうる最大損失額)」を利用していることが紹介された。さらに、銀行全体としては、市場リスクを含めた全てのリスクを合算のうえ自己資本の範囲内へコントロールをする業務運営(いわゆる統合リスク管理)を行っていることが紹介された。

また、リスクは、「利益の発生する可能性(収益の源泉)」でもあることから、リスクをしっかりとっていくことが地方銀行のビジネスモデルであり、銀行の企業価値向上のためにはリスク管理の高度化が必要不可欠である点が強調された。他方で、同行は、サブプライム関連商品は直接保有していなかったものの、金融危機をきっかけとして保有証券の価格や流動性の低下による損失拡大の反省を踏まえ、「想定外のリスクの特定」といったリスク管理上の課題も認識しているとの発言があった。

最後に、「様々な勉強をしていく中で理解できないことがあったら、そのままにするといったリスクの回避的行動をとるのではなく、自分で仮説を立て、探求・検証していくという経験を学生時代には行ってほしい」との学生へのメッセージが伝えられ、セミナーは終了した。

なお、聴講者からは、「実例を踏まえたわかりやすい説明に加えて、BPVの計算事例などを通じて、市場リスク管理の仕組みがよくわかった」「講義で勉強したVaRが実際のリスク管理の現場で利用されていることを知って驚いた」「リスクとは収益の源泉であり必ずしも避けるものではないことや、リスク管理の重要性が理解できた」等の意見が多く出された。

今回の講演の開催に対してご尽力いただいた滋賀銀行の関係者の方々、本学前理事の力石伸夫様及び経済経営研究所江竜美子様に対して、重ねて感謝の意を表したい。(本セミナーの参加者は約320名。)(文責 原村健二)


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