・日時:2023年11月29日(水)16:10-17:40
・表題:Central Bank Information Effects in Japan: The Role of Uncertainty Channel
・講師:発表者:松本 涼 氏(一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程在籍)
:共著者:森田 裕史 氏(東京工業大学 工学院 准教授)
・開催様式:対面
・開催場所:士魂商才館3Fセミナー室1
講演概要
本セミナーでは、報告者である松本涼氏とその共著者の森田裕史氏を招き、日本経済における金融政策の効果を推定する研究についての報告が行われた。
これまでの研究では、金融政策は政策変更のアナウンスが金利や株価へ瞬時に影響を及ぼすため、高頻度データを用い政策変更アナウンス前後の分単位のデータの変動を利用することで政策効果の推定が可能と考えられてきた。しかし、この高頻度データを用いた推定手法の問題点が近年議論されている。中央銀行が政策変更をアナウンスする際、同時に中央銀行が持つ経済の見通しが公開され市場に影響を及ぼす、いわゆる情報効果、が存在すれば、必ずしも政策アナウンス前後の変動が政策の効果のみによるものだと解釈できないと指摘されている。そしてこの点を解決するため、複数の高頻度データを組み合わせた新しい分析手法が提案されている。報告者らは、この新しい分析手法によって日本経済における金融政策の効果を推定した。
報告された推定結果においては、日本の金融政策における情報効果が存在することが示された。これは、高頻度データから推計できるアナウンスメント前後の変動は金融政策のみの効果ではないことが示唆されている。また、報告者らが行った政策効果と情報効果の分解結果も紹介され、新たに推定された金融政策の効果についての議論が行われた。
研究報告においては研究のモチベーション、推定手法とデータ、推定結果、頑健性分析が順次説明された。報告中には適宜フロアからの質問を受けつつ対話的なプレゼンテーションが行われた。研究発表後の質疑応答では、参加者たちが熱心に発表者に質問を投げかけ、様々な議論が繰り広げられた。また、セミナー後には懇親会が開かれ、報告者や共著者との有意義な交流が行われた。
(文責:経済学部講師 井上 俊克 )
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