移動する療養者青木恵哉の生の軌跡をめぐる実証研究
社会システム学科 教授 阿部 安成
本事業における史料調査をとおして、
(1) ハンセン病をめぐる国立療養所は、その母体が設置された20世紀初頭の時点ですでに、それぞれの事情をもった開所となった様相の一端を把握しつつある、
(2) 沖縄地元紙の報道から、青木渡沖まえの同地でのハンセン病をめぐる動向やキリスト教徒による伝道が明らかとなった、
(3) 青木がその礎を築いたと讃えられている療養所の後継としてあり、青木自身が暮らした国立療養所沖縄愛楽園におかれた同園交流会館での展示をとおして、青木をめぐる歴史展示の現状と問題点や課題を把握することができた、
(4) さらに、本事業と連係して、他予算によって執行した熊本での調査をとおして、熊本における青木の活動を明らかにする写真、音声記録、書簡など新史料を得ることができた。
こうした史料調査の成果をふまえて、青木の評伝の執筆を継続中である。