経済学部・大学院経済学研究科

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講演会「世界からみた日本文化:俳人から聞く<現代俳句>の魅力」(5月19日)

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  • 日 時:2025年5月19日(月)17:45-19:00
  • 表 題:講演会「世界からみた日本文化:俳人から聞く<現代俳句>の魅力」
  • 発表者:Owen Bullock(俳人・キャンベラ大学講師) 佐藤文香(俳人・詩人)
  • 場 所:滋賀大学彦根キャンパス セミナー室Ⅰ(士魂商才館3F)
  • 開催様式:対面(学内限定)
  • 使用言語:使用言語:日本語&英語。通訳なし
  • 司会:菊地利奈(本学経済学部教授)

講演報告

国際的に知られる日本文化というと、manga  anime が思い浮かびやすいが、それ以上によく知られているものとして haiku(俳句)が挙げられる。英語圏では小学生でも学校で学ぶこの「haiku」なるものが、日本で考えられている「俳句」とどのように同じでまた違うのだろうか。現代社会、それもグローバルなコンテクストにおける「haiku」の魅力とは何なのか。

本講演会では、高校生の時にデビューをはたし、国内外で活躍する俳人の佐藤文香氏と、英語俳句の分野で活躍する haiku poet  Owen Bullock 氏をゲストに招き、現代人にとっての俳句/haiku の魅力を語ってもらった。講義は、経済学部教授の菊地利奈を司会としたラウンドテーブル式をとり、学部生にも積極的に発言してもらう形で、参加型講義として展開した。

講義では、「句会」における匿名性と句評の性質をいかした疑似句会アクティビティを実施。5つのグループに分けられた合計21句が掲載された資料が佐藤氏によって配布され、学生参加型の投票が開始した。それぞれのグループから好きな句を選び投票してみると、学生が選ぶ句がばらつくことが明確になった。どのグループでもひとつの句に票が集中することはなく、おもしろいほどに票が割れた。換言すると、絶対的に「すぐれた一句」があるのではなく、それぞれが自由に句を評価してよく、ひとりひとりが違う感想を持ってよい、ということでもある。「わかる~」「ぐっときた」など、楽しそうに選句している学生らの姿を見て、専門知識がなくとも俳句が楽しめることを痛感した。

季語がない句、575にまったくあてはまらない句、「けり」や「かな」という代表的な切れ字や伝統的な作風を重んじるものから、「マーガリン」や「バンド」等のカタカナ、「ぬーん」などの擬音語がちりばめられた21句は、現在活躍する若手俳人の作品であることなどが、「疑似句会」のあとの「答え合わせ」で佐藤氏から解説された。

Owen氏からは、haiku が世界中で文学ジャンルとして成り立っていること、特に、クロアチア等の旧東ヨーロッパで現在盛んであることが説明された。英語俳句では575も季語も重視されないこと、また、俳句と散文を合わせた「haibun(俳文)」など、ジャンルをまたがる表現法が英語圏で活発になっていることが述べられた。また、配布されたOwen氏の英語俳句を読みながら、10単語程度で複雑な感情やおかれた状況等を表現できる文学手法の魅力が語られた。特に、Owen氏の「on the piano / photos of the ones / who don't visit」に対して、多くの学生が共感していた。

おふたりの俳人による俳句の日英バイリンガル朗読もおこなわれ、講演後には、日英両言語で、参加者からさまざまな質問があがった。Owen氏は日本語がわからないため、参加者が真剣にOwen氏の英語での講演を理解しようとつとめ、英語で積極的に質問をしていた様子が印象的だった。学生からのフィードバックには、講演会で読んで気に入った句についての分析や長い感想、英語俳句を初めて読んだことに対する新鮮さや共感などが寄せられた。世界で活躍するおふたりの俳人から実際に話を聞くことで、「俳句」が古いものでも、日本だけのものでもなく、時間も空間も言語も超え、今現在も世界中でひろがりをみせていることを実感できる貴重な機会となった。

 (出席者約35名)

(文責・経済学部教授 菊地利奈)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

講演者プロフィール

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佐藤文香(さとう・あやか):俳人、詩人。

早稲田大学第一文学部総合人文学科日本文学専修卒業。句集に『海藻標本』(第10回宗左近俳句大賞)、『君に目があり見開かれ』、『菊は雪』、『こゑは消えるのに』。2014年ごろから詩も書き始め、『渡す手』にて第29回中原中也賞。編著に『俳句を遊べ!』、『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』。京都文学レジデンシー02に参加。日本語・日本文化教育における俳句の活用について研究中(佐々木幸喜と共同)。句集の編集協力や作詞なども手がける。日本女子大学、都留文科大学非常勤講師。日本文藝家協会、日本語教育学会会員。


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Owen Bullock(オーウェイン・ブロック):俳人、詩人、キャンベラ大学講師

Owen Bullock has published five collections of haiku, a bilingual edition of tanka, four books of longer poems, and a novella. His research interests include creative arts and wellbeing; haikai literature; poetry and process; semiotics and poetry; prose poetry; and collaboration. His scholarly work has appeared in Antipodes, Journal of Creative Arts Therapy, Axon, Journal of New Zealand Literature, Ka Mate Ka Ora, Medical Humanities, New Writing, Qualitative Inquiry, Social Alternatives, TEXT and Westerly, and he has a book chapter in British Prose Poetry: The Poems Without Lines (Palgrave Macmillan, 2018). He is Discipline Lead for Creative Writing and Literary Studies at the University of Canberra. His other interests include music, juggling and chess.


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