経済学部・大学院経済学研究科

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先端研究セミナー(20250508)

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セミナー概要

産業革命以降、世界の経済規模は爆発的に拡大しました。その結果、人類は地球環境を大きく変え、生態系を大きく攪乱し、その結果人類の生存基盤が脅かされる事態に至っています。このような危機的状況を克服し、持続可能で幸福な未来を実現する上で、現在の社会経済システムの理論的土台となっている経済学(いわゆる主流派経済学)を批判的に再検討し、新しい経済モデルを考える必要があるというのがこのセミナーのテーマです。成長のジレンマと経済成長依存型システムの問題、世代間公正と割引率、生態学的レジリエンスといったトピックを紹介しながら、皆さんと一緒に新しい経済モデルについて考えていきたいと思います。


講演報告

 今年度の初めの先端研究セミナーは地球環境戦略研究機関関西研究センター所属の小嶋公史プログラムディレクターを迎え、『経済学の常識を疑おう! 持続可能な未来のための新しい経済モデルを考える。』と題するセミナーを実施した。

 本年度の先端研究セミナーは昨年に引き続き「内容は先端研究だけど、気軽に研究者に質問・意見交換ができる場」をテーマにし、セミナーの前後にはコーヒーセッションとワインセッションを設け、参加者らのより活発な交流を促す取り組みを行う。本セミナーにおいても講演会前のコーヒーセッションから多数の参加があり、発表者らとの交流を通じ和やかな雰囲気の下で講演の時間を迎えた。

 講演では、主流派経済学の基礎的枠組みを地球環境問題の観点から批判的に検証し、新たな理論的フレームワークを提案する研究発表を行った。講師は主流派経済学においては環境が希少資源として認識されていないことや、補償原理を用いた経済政策の正当化について取り上げ、これらが環境汚染問題を見過ごした要因ではないかと批判的検証を行った。そのうえで、経済学が取り入れるべき概念として「エコロジカル・フットプリント」や「プラネタリー・バウンダリー」、「生態学的レジリエンス」を紹介し、より環境問題の解決に向けた提案をした。

 講演の後半では質疑応答の時間も設けられ、学部生や社会人大学院生、外部からの参加者など多様なバックグラウンドを持つ参加者から意見交換が行われた。その一部を取り上げると、「環境問題の解決は統一政府を必要としているのか」や「持続可能な開発目標は環境を守りつつ達成可能なのか」、「GDPに代わるより良い指標はないのか」といった質問が行われた。講師はこれらの質問に正面から答え、有意義な議論が行われたと感じられた。

 講演後にはワインセッションが設けられ、講演の内容やさらに発展させたテーマについて参加者間で活発な意見交換が行われた。小嶋公史プログラムディレクターの研究報告は、既存の研究手法を批判的に検討し新たな手法を提案するという科学的方法の王道ともいえる発表であった。本セミナーでは、本学の研究者や学生らを中心におよそ40名が参加し、学問の根底となる論理を再考する知的興奮に満ちたセミナーとなった。

(経済学部講師 井上 俊克)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

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