・講演日時:2024年6月27日(木)16:10-17:40
・表題:経済的インセンティブでSDGsは解決するのか?
・開催様式:対面
・開催場所:講堂(ラウンジセッション:多目的ルームⅠ(講堂内))
今回も好評につき、多くの聴講者にお越しいただいたため、 このたび会場を変更・拡大し、急遽講堂にて講演が行われました。
セミナー概要
SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて、企業による貢献への期待は非常に大きい。それに応えるために、企業は経済的インセンティブを持ってSDGsに取り組むべきだという議論がある。しかし、それではSDGsの名の下で実施される「通常のビジネス」に過ぎず、企業のSDGsへの貢献が制限されてしまいかねない。また、その場合、実態が伴わないSDGsウォッシングとして批判の対象となり得る。そこで今回のセミナーでは、日本企業とベトナム企業のデータを用いた実証分析の結果から、企業がSDGsに取り組む際の経済的インセンティブが倫理的インセンティブと比べて本当に実務的に望ましいのかを議論する。
セミナー報告
神戸大学経済経営研究所副所長・教授の西谷公孝氏を講師に招き、「経済的インセンティブでSDGsは解決するのか?」と題するセミナーを開催した。
セミナーでは、サステナビリティ経営の基本概念の説明から始まり、経済学と経営学の両分野における学術的な議論を交え、最新の研究成果についても報告された。
まず、セミナーではサステナビリティ経営とは何かについて、複数の学術的な視点を交えながら解説が行われた。経済学的視点では、企業の目的は利潤最大化行動である。そしてその利潤を生み出す中にサステナビリティ経営が位置付けられている。一方、経営学的視点では企業の目的は社会的責任を果たすためである。そして社会的責任の中にはサステナビリティが含まれていると解釈される。この2つのサステナビリティ経営の解釈で大きく異なる部分は、サステナビリティ経営が利益を生み出す活動のみにとどまるのか、利益を生み出さないことも社会的責任を果たす過程で実行されるのかである。
学問間で異なる解釈があるが、どちらが現実を説明できる概念となっているのか?その問に答えるため、講師自らが行った研究について丁寧な説明が行われた。この研究では日本とベトナムの企業を調査し、経済的動機と倫理的動機の企業経営への重要性を比較した。研究結果からは倫理的動機付けが企業がサステナビリティ経営に取り組む上でより重要な役割を果たしていることが明らかにされた。
セミナーの終わりには質疑応答の時間が設けられ、聴講者と報告者の間で様々な議論が行われた。とりわけ学部生や大学院生などからも積極的に質問が行われ、多様な意見を交換する有意義な質疑応答の時間となった。
また、今年度から実施しているコーヒーセッション及びワインセッションをセミナー前後に引き続き設け、講師と参加者ら (本学教職員、学部生、大学院生、客員研究員など) は気軽に様々な会話を交わしていた。本セミナーは現地から48名、オンラインから10名の総勢58名が参加し非常に盛況な会となった。
セミナー全体を通じて際立っていたのは、西谷公孝教授の明晰な講演内容、それに触発された聴講者からの鋭い質問、そしてセミナー前後の活気あふれる研究交流であった。参加者一同はこの機会を通じてサステナビリティやSDGsの本質的な意義についてより深い理解を得ることができたと確信する。
(文責:滋賀大学経済学系 講師 井上 俊克)
--講演の風景--
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