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先端研究セミナー(20230720)

・日時:2023年7月20日(木)16:10-17:40

・表題:Voluntary Participation in a Negotiation on Providing Public Goods and Renegotiation Opportunities

・講師:平井 俊行 先生(法政大学 経済学部経済学科 教授)

・開催様式:対面

・開催場所:士魂商才館3Fセミナー室1


セミナー概要

 公共財供給におけるただ乗り問題を解決するために効率的な供給を達成するメカニズムなどが多く提案されてきた。

 一方、メカニズムへの参加を主体たちに強制できない場合、公共財の非排除可能性により参加を拒否することで他の主体たちの公共財供給にただ乗りするインセンティブが発生してしまうという(公共財供給への)参加問題が発生する。

 参加問題の標準的なモデルにおいてはごく少数の主体のみ公共財供給に参加することが知られている。

 本論文は、参加問題の標準的なモデルに対し、供給への参加者たちが非参加者たちと一度だけ公共財の追加についての再交渉が可能な場合を定式化し、そのもとで最低限達成される参加者数を特定した。

 この結果により、再交渉の可能性が、供給への参加者を増やし、参加問題の深刻度を緩和できる可能性があること、および参加者を増やすためのカギとなるのが再交渉における参加者たちの交渉力であることを示した。


セミナー報告

  平井先生は協力ゲーム理論やマッチング理論を専門にされており、Journal of Economic Theory, Games and Economic Behavior など、一流ジャーナルに多数論文を掲載されております。

 今回のセミナーでは、「Voluntary Participation in a Negotiation on Providing Public Goods and Renegotiation Opportunities」の題で報告していただきました。簡単な論文の概要は以下の通りです。

 この論文では、公共財供給交渉における自発的参加に関する問題を考察しています。特に、プレイヤーが交渉に参加するか否かを意思決定し、その後最初の交渉に参加したプレイヤーと参加しなかったプレイヤー間で公共財供給に関する再交渉ができるという新しい(再交渉の部分)モデルを提供しています。この再交渉の機会が、公共財供給におけるプレイヤーの参入行動にどのような影響を与えるかを考察しています。

 具体的な交渉の流れは以下の通りです。

 第1ステージでプレイヤーは、第2ステージで行われる交渉の前に、各自交渉に参加をするかどうかの意思決定を行う。第2ステージでは、第1ステージで交渉に参加すると意思決定をしたプレイヤー間で公共財の供給水準と交渉によって生まれる余剰の分配を交渉する。この交渉が合意に達すれば、第3ステージに進む。第3ステージでは、第2ステージの交渉に参加したプレイヤーと交渉に参加しなかった各プレイヤー間で公共財水準と余剰の分配について再交渉することができる。

 本論文では、第2ステージの交渉参加者の数に関する、以下の性質を満たす閾値を示している:(i)第2ステージの交渉参加者の数がその閾値を下回り、第2ステージで公共財が提供される均衡は存在しない、(ii)第2ステージの交渉参加者の数がその閾値を上回り、第2ステージで公共財が提供される均衡が存在する。

 個人的な感想ですが、セミナースライドや論文でネットワークインフラや電力供給、国際河川に関する環境問題を言及されていますが、公共財問題は大変身近な例で、あの場合はどうなるだろうか?など想像したり、個人的に大変有意義な機会になりました。

また、セミナー報告前後で平井氏とセミナー参加者間で意見交換をする機会もあり大変有意義な時間を過ごすことができました。

(文責:総合経済学科 教授 府内直樹)

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