経済学部・大学院経済学研究科

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先端研究セミナー(20230706)

・日時:2023年7月6日(木)16:10-17:40

・表題:組織論における批判的実在論の可能性:仕事のダイナミクスの解明

・講師:筈井俊輔先生(小樽商科大学 大学院商学研究科 アントレプレナーシップ専攻 准教授)

・開催様式:オンライン開催


セミナー概要

 本報告では、私自身が取り組んできた研究の試みを題材にして、組織研究において存在論や認識論を理解することの重要性やそこから生まれる新たな可能性についてお話しします。

 私の研究の根底には、社会学ではなじみの深い、「人々の活動はいかに秩序化されるのか」という問いがあります。このような問いに取り組む研究は、近年、日本の経営学や組織論でも「組織化」(organizing)研究として認知されるようになりました。とくに私の研究関心は、新たな仕事の創発や、組織の再生産・転換のメカニズムの解明にあります。本報告では、既存研究の問題を明らかにするとともに、その解決方法として、批判的実在論に基づく組織論の可能性を提案したいと思います。


講演報告

従来、組織論では仕事をマニュアルや繰り返しのルーチンとして捉え、組織ルーチンは生産性を高める措置としてその価値や重要性が多く議論されてきている。 このセミナーでは、組織ルーチンを批判的実在論という科学哲学のメタ理論から問い直そうとする筈井俊輔先生をお招きしその独創的な研究内容を紹介していただいた。

 筈井先生はまず批判的実在論を新たに組織論に導入する理由を説明していただいたうえ、劇的な環境変化に適応するために特異な仕事(あらかじめ定めることのできないその他のこと)が生まれた事象は、構造や行為、特にそれらの因果関係から解明する必要があると指摘された。 筈井先生によって提示された批判的実在論に基づいた重層的なダイナミックス・モデルは、観察可能な事象の領域(行為)と観察不可能な実在の領域(構造)から成り、その2つの領域の相互作用を推論することで事象創発のダイナミクスの解明を可能にした。 それだけでなく、このモデルが部活、サテライトオフィスの設置など多様な事例への論証の可能性も示した。

このモデルにより、筈井先生は事象を創発させる構造やメカニズムの推論と介入を包摂する業務創発のマネジメントを目指す。 また、組織を変化させるためにはパターンではなく、パターンを創発する社会・物的構造を再構築すべきなどの重要な示唆を多くいただいた。

(経済学部教授 陳 韻如)


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