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講演会「景気を測る」

日  時: 2月2日(木)13:30~15:00

論  題: 「景気を測る」

報 告 者 : 増島稔(内閣府経済社会総合研究所・所長)

開催様式: 対面とZoomの併催

場  所: セミナー室Ⅰ(総合研究棟〈士魂商才館〉3階)


 【講演報告】

 内閣府経済社会総合研究所の増島稔所長をお招きし、「景気を測る」というタイトルでご講演をいただいた。ご講演は、大きく分けて「景気動向指数の見直し」と「景気分析の最近の動向」の2部構成であった。

 まず前半は、1950年代後半に開発された景気動向指数は財の動きを中心として景気循環を把握していたため、ものづくり中心の当時は妥当性があったが、経済のサービス化などが進む中で、現状の景気動向を把握するものとしては見直しの必要性が高まってきたことの説明があった。そのうえで、財の共通変動よりも経済活動の総体量に着目するなどして、新しい指数の作成が行われ、その結果、GDPに近い動きをトレースする指数となったとの紹介があった。

 後半では、ダイナミック・ファクター・モデルを用いた景気推定とリアルタイム分析についてご紹介があった。また、新型コロナ感染症の流行を背景に速報性の高い高頻度データ(いわゆるオルターナティブ・データと呼ばれるもの)の有用性が高まり、民間も含めたそうしたデータの入手可能性の増大・分析技術を含めた技術進歩などとも相まって、活用が活発化しているとして、ご自身がかかわられた研究事例のご紹介があった。一つはPOSデータを使って、価格変動を需要要因と供給要因に分解するものであった。別な事例では、携帯電話の位置情報を用いて昼夜のエリア別滞在人口を推計して、働き方改革の成果の評価に利用するものであった。第三の事例では、内閣府で行っている「景気ウォッチャー調査」を用いて、どのようなコメントが景気認識に対して良いあるいは悪いコメントであるかを機械学習させて、そのうえで新聞記事を読み込ませ指数化し(新聞センチメント指数)、従来からある消費者マインド調査の消費者態度指数やPOSデータによる消費動向との相関関係を調べたところ、高い相関が確認されたという。

 最後に、オルターナティブ・データにも、サンプルの偏りによる代表性・信頼性の問題、サンプルの変動による継続性・安定性の問題などもあり、課題も多いが、証拠に基づく政策形成(EBPM: Evidence Based Policy Making)への社会的要請も強いので、データサイエンティストなどとの協働を深めて経済分析に活用していくことが引き続き必要であるということで、締めくくられた。

 ご講演は、増島所長ご自身の研究についてはもちろん、GDP推計や景気統計の作成のほか、幅広い経済社会活動に関心をもって取り組んでいる内閣府経済社会総合研究所の活動を知る上でも大変有益なものであった。

(文責:経済学部長 中野 桂)

講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子
講演会の様子

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