- 日 時:2024年12月11日(水)14:30-16:00
- 表 題:講演会「現代に生きる小泉八雲とセツ、そして『怪談』
- 発表者:小泉 凡(島根県立大学名誉教授・小泉八雲記念館館長)
- 開催場所:滋賀大学彦根キャンパス 14番講義室(校舎棟2F)
- 開催様式:対面
【講演報告】
12月11日14時半から16時、島根県立大学名誉教授・小泉八雲記念館館長 小泉凡先生による、「現代に生きる小泉八雲とセツ、そして「怪談」」の講演が行われました。本講演は真鍋晶子の全学教養科目「言語と文化」の一貫として行われ、彦根キャンパス110名、石山キャンパス10名ほどの教職員に加え、一般参加者も数名見られました。2024年は小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、1850-1904)の没後120年、代表作『怪談』出版から120年を迎えています。その『怪談』の現代における意義、ハーンの「オープン・マインド」、五感力、そしてSDGsをキーワードに、ハーンの曾孫である先生だからこそご存じであり、また体験されてきたエピソードを独自の視点で、また貴重な画像をたくさん交えて、お話しいただきました。多くの情報を、わかりやすく、深めて下さったことに感謝しつつ、その場にいる誰しもが共有できる知的喜びに満ちた1時間半となりました。
19世紀半ばにギリシャ人の母とアイルランド人(英国統治下であったので当時は英国人)の父のもとに生まれ、アイルランド、イングランド、フランスで教育を受け、アメリカ、マルティニークを経て、日本で生涯を終えたハーンが、どのようにしてopen mindを持つようになったのかが、変化に富む人生のなかからポイントを押さえて紹介され、特にカタストロフィックな経験が彼にもたらしたこと、さらにハーンから現代社会がいかに学ぶことができるかが伝えられました。ゴーストについても、ハーンが見出したことが、時空を超えた普遍性をもつからこそ、現在、世界中で注目されていることが、松江でのゴーストツアーやSDGs講座など小泉先生を中心とした様々な企画、日本公演だけでなく海外公演も重ねられている「小泉八雲朗読のしらべ」、2022年から2023年半年で9万5千人の来場者を得たミラノでのプロジェクションマッピングによる展示、2024年ニュー・オーリンズのマルディグラでハーンをテーマとするRex、さらには現在アイルランドと日本を巡回しているKWAIDANアート展などを例に紹介されました。また、来年秋のNHK朝ドラ『ばけばけ』の主人公がハーンの妻、小泉セツに選ばれたことから、セツについて、セツのハーンにとっての意味などが、まさしく、小泉家の先生でしか知ることができないセツについてのエピソードやNHKとの裏話を交えて語られました。
「言語と文化」の講義では、前半はアイルランドの国民詩人・劇作家W.B. イェイツと日本について一つの軸としていました。イェイツとの交流もあったハーンを後半の軸とする予定ですが、その第一回としてこれ以上の講義はないものでした。前半の特別講師は大蔵流狂言師松本薫先生によるものでしたが、2017年の日愛外交成立60周年事業のひとつであったアイルランド狂言公演の際には、茂山千五郎師に委嘱してハーンの作品に基づく新作狂言も演じてもらいました。ハーンは「狂言」を意識した作品は書いてはいませんが、これは能楽およびハーンの現代性の現れであり、また、セツが大切にしていたもののなかに狂言のモチーフを使ったものもあり、さらにセツは喜多流の謡や小鼓を習っており、本講義を貫く能楽との接点も見られます。
今回も生きた学びを得られる貴重な1時間半でした。
(経済学部教授 真鍋晶子)
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