日 時:2024年12月6日(金)14:30~16:00
表 題:講演会「世界の言語の中で日本語の名詞修飾節はどのような特徴があるか?-言語類型論と語用論の観点から-」
発表者:堀江薫(関西外国語大学教授、名古屋大学名誉教授)
場 所:滋賀大学彦根キャンパス セミナー室Ⅱ(士魂商才館3F)
開催様式:対面
開催報告
関西外国語大学の教授である堀江薫先生をお招きし、言語類型論の立場から名詞修飾節や関係節表現における,日本語やその他のアジア言語の振る舞いについてご講演いただきました。
堀江先生と経済学部教授の野瀬は、野瀬が大学院生の頃からの30年近くの指導教員のひとりであり,堀江先生の研究を手本に研鑽に励んできました。今回、堀江先生に滋賀大学に来ていただき、言語類型論について講演していただくことは、大変喜ばしいことでした。
講演では、まず言語類型論の基本的かつ基礎的な知識や語順に関するバリエーションについて説明された後、名詞修飾説、つまり関係説や連体修飾に関する説明が行われました。言語類型論(Linguistic Typology)とは,言語学の分野の一部で,7000以上もある世界の言語の文法を語順や動詞屈折の種類,受動構文の有り無しなどというカテゴリーで分類し,その傾向や特徴を探り出すことを目的とする.例えば,語順であれば,言語には主語(S: Subject),動詞 (V: Verb)そして目的語(O: Object)があり,例えば日本語では,当然SOV「太郎が本を読む」, 英語ではSVOの語順(John eats an apple.)となる.ただし,S, V,Oの組み合わせは,ほかにも存在し,VSO, VOS, OVS, OSVのような語順の可能性がある.世界の言語1200言語の語順を調査したDryer (2005)によると, 1200言語のうち900言語以上がSOVかSVOの語順であり,VSO語順は85言語,VOSは26言語,OVSは9言語,OSVは4言語だけである.
このように人間が話す言語において,語順の違いが存在し,各言語にその語順を決定するような文法の仕組みが存在する.さらに名詞修飾に着目すると,日本語は「太郎が読んだ本」のように,「本」を修飾する「太郎が読んだ」が前に来るのに対し,英語では"the book which Taro read"のように"the book"が前に来て,関係代名詞whichを挟んで,そのあとに"Taro read"が来る.語順と名詞修飾の間には関係性があり,日本語のようなSOV語順だと,修飾部>名詞の順であり,英語のようなSVO語順だと名詞>修飾部の順となる(ただし例外はある).他にも日本語には,「さんまの焼けるにおい」「大阪にとまった朝に」「『空気読め』発言」など,ほかの言語には観察されないような名詞修飾表現があり,それらの表現についての説明を試み,講演をまとめられた.
(経済学部教授 野瀬昌彦)
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