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研究会「高商史研究の課題 第2」

日時:2024年2月9日(金)10:00~13:00

論題:研究会「高商史研究の課題 第2」

開催方式:対面

場所:セミナー室Ⅲ(総合研究棟〈士魂商才館〉3階)

報告者

  • 阿部安成(本学経済学部教員 )
  • 今井綾乃(本学大学院経済学研究科博士後期課程 )
  • 坂野鉄也(本学経済学部教員 )
  • 福浦厚子(本学経済学部教員 )
  • 横井香織(静岡県立大学グローバル地域センター特任准教授 )

※今回の研究会は、教育21研究会との共催となります。

講演報告

 「高商史研究の課題 第2」と題した本研究会では、まず、19世紀末から20世紀前期にかけて高等商業教育の場として設置された実業専門学校である旧制官立高等商業学校(高商)史研究の論点を確認した。それは、まず、① 高商史料はその残りぐあいが高商を母体とする現在の国立大学法人の経済経営学系学部の史料所蔵機関ごとに異なることから、その史料論が不可欠であること(出席者のひとりはそれを「書史論」という)、ついで、したがって、② 手にし得る史料にそくして各高商史を記さざるを得ないことから、比較史の観点が必要であり、またそのうえで、③ 高商という教育の場を全体としてとらえるとともに、それとの関連で個別の学校史を考える、さらには、④ 高商はそれが機能した時代相に応じて、列島の内地のみならず外地にも設置されたので、植民地などの外延部にあるそれらを内地の官立高商と分離して論じたり、つけたしとして添えて終わりとしたりするのではなく、それらを連環してとらえる考察の枠組みをつくり、視野を欧米にまで広げて、世界史における同時代史として考えるときがきているといえる。

 商いから商業へ、かつ、実業という概念や制度の移入とその実践や起動がどう整えられ定着してゆこうとするのかをたどると、そこには、商業--実業を軸として展開する世界史が展望できよう。とりわけ、東アジアというフィールドで、この商業--実業を軸とした学知と実務をめぐる学芸を体現した男たちの流動と交通の軌跡を描く歴史は、従来の帝国史や植民地史とは、なにが、どう異なるのかが問われてゆくだろう。それに耐え得る歴史叙述に挑んでゆきたい。(それとともに、この商業--実業の軸とはべつに女たちのそれを考える課題が登場する)

 さらに、実証研究を遂げてゆくには、それら高商の官立学校としての法源をきちんと把握しておくことも欠かせない。政策と法とによって学校が設置されてゆくとき、それが設置地域の編成替えを惹起するばあいがある。

 実証研究としては――どうやら彦根の地に高商を誘致させようとしたその経緯をたどると、それはたんに、大津か彦根か、県庁所在地か城下町かのいわば綱引きにとどまらず、彦根に高商を引き寄せるためにはその周囲にある複数の郡の誘因力をも動員し、かつ、彦根町域の小商工業者の寄附金をも引き出させ、政党の組織力をもみずからの思惑に合わせて活用したようすを明らかにした研究がまとめられた。そうして彦根の地で教育と研究を始めた彦根高商では、一貫して人格陶冶を基軸にすえたカリキュラムが実施され、事業経営を担い得る実務従事者を養成し、多くの卒業生をうまいぐあいに職に就けるよう学校の責を果たし、卒業生たちはその全数のうちの半数以上が初職にとどまることなく、二職、三職と職の能動性を発揮することにより、みずからを実務従事者として、さらには事業経営者として転身していったことが明らかにされた。

(経済学部教授 阿部安成)


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