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講演会「中国5県の諸方言における敬意表現の多様性」

日 時: 2023年11月24日(金)16:10~17:40

論 題: 「中国5県の諸方言における敬意表現の多様性」

講 師: 桑本裕二 (鳥取県立農業大学校非常勤講師)

場 所: 滋賀大学彦根キャンパス 研究工房(士魂商才館1F 経済経営研究所横)

開催様式: 対面


講演会報告:

コロナ感染予防のため中断していた言語学系の講演会を今年から再開させました.6月にはフランス語の研究者を,そして今回は鳥取県から,県立農業大学校非常勤講師の桑本裕二先生をお迎えして,「中国5県の諸方言における敬意表現の多様性」という題目で講演会を実施しました.中国5県というのは,中国地方の岡山県,広島県,山口県,鳥取県と島根県であり,この中でも敬意表現の方言差の分布に興味深い分布状況があることが判明しました.

中国地方では,「行きなさる」という形式が,鳥取県の東部や島根県の出雲市より西部では「行き-んさる」という「ーんさる」形を取る一方で,鳥取県西部から島根県の米子市や松江市では「行きーなる(過去形:行き-なった)」という「ーなる」形を取る.そしてこれらの形式「ーんさる」,「ーなる」形は岡山県,広島県や山口県には存在しない.

次に「行きなさる」の命令形について見てみると,鳥取県東部,島根県,広島県や山口県で「行きーんさい」という「ーんさい」形を取る.他方,鳥取県西部,島根県の安来市や松江市,広島県(特に呉市)では「見に来ない」という「ーない」形がある.ただし,桑本先生の調査によると,この「ーない」形は,鳥取県や島根県では現在でもその用法が観察されるが,広島県ではすでに消失していることが判明した.その傍証として,戦後の広島県呉市を舞台とした映画「仁義なき戦い」の役者の台詞に,複数の「ーない」形が観察されることを指摘した.映画の脚本やその台詞には,呉市の人々の方言使用も考慮されており,少なくとも当時(戦後から1970年代頃)は,一部の人々にとって「ーない」形が生産的に使用されていたとの解釈ができる.

これらの観察から,テレビやネットが発達した現代においても,方言使用が多く観察可能であること,そして,使用の分布がおそらくは昔の藩や県制度の影響を受けている可能性があることがわかる.

(文責:経済学部教授 野瀬昌彦)


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