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動学的南北貿易モデルによる技術政策・貿易政策の経済厚生分析

経済学科  助教授 大川良文
 研究機関中に書いた論文はWorking Paperとしてシドニー大学のHPで公表されている(題:Intellectual Property Rights and International Capital Movement,Report Number: GOV2005-3, Sydney University, School of Economics and Political Science)。
 その要旨は次のようなものである。新技術の開発を行う北(先進国)と北の技術を模倣する南(途上国)からなる一般均衡動学モデルを用いて、南の知的所有権強化が南北両地域の経済厚生に与える影響を分析している。主な結果は次のとおり。1)南北間の資本移動が完全に自由であり、南の技術模倣率が十分高い時、南の知的所有権強化は北の経済厚生を改善させる。このことは、定常状態における北の技術開発率が低下するにもかかわらず発生する。2)南北間の資本移動の有無に関わらず、南の知的所有権強化は南の経済厚生を悪化させるが、資本移動が存在している時の方が経済厚生の悪化の度合いは小さくなる。
 この論文が示していることは、まず一つは、南の知的所有権の強化に関して南北間で交渉が行われる時、南北間の国際資本移動が自由になるほど、北の政府は南に対して知的所有権の強化を要請する誘因が増すことである。この結果は資本のグローバリゼーションが進む中で先進国が途上国における知的所有権強化を強く要請する現状を反映しているものと思われる。特にこの論文の分析で強調されることは、南の知的所有権の強化が長期的には北の技術開発活動を停滞させるにもかかわらず、北の経済厚生を改善させることを示していることである。このことは、長期的な定常状態だけでなく定常状態への移行過程までも分析した本論文でなければ導出されない結果である。もう一つは、南北間で南の知的所有権の強化を交渉する際、南に知的所有権強化を実行させるための経済的補償は南北間の国際資本移動が自由になるほど少なくなることである。この二つを考慮すると、南北間の国際資本移動が自由になるほど南の知的所有権の強化が南北両地域の経済利益に結びつきやすくなると考えられる。
研究成果発表の時期と方法
 すでにシドニー大学のHPにWorking Paperとして公表されているが、もう少しページ数を短くした上で、査読付き英文ジャーナルに今年度中に投稿する予定である。
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