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マレーシア・ペナンの路上屋台に関する比較社会学的研究

社会システム学科 准教授 鍋倉 聰

 ペナンとシンガポールは、ともにマレー半島に隣接する島で、華人がマジョリティを占め、かつて戦前において英国海峡植民地であったという共通点がある。
 その一方で、両者の戦後の歩みは、大きく異なった。ペナンは、マラヤ連合からマラヤ連邦を経て、マレーシアの一州となって現在に至る。他方、シンガポールは、英国の方針でマラヤ連合やマラヤ連邦に加えられず、英国植民地のままに置かれた。1955年の部分自治政府成立を経て、1959年に自治が拡大し、1963年にマラヤ連邦とともにマレーシアに加入したが、結局1965年にシンガポール共和国として独立して現在に至っている。
 この結果、かつてはともに海峡植民地であったペナンとシンガポールは現在、大きく異なっている。シンガポールが、一独立国家として、リー・クアンユー初代首相率いる人民行動党の下で国内を徹底的に開発し、徹底的に管理している。これに対して、ペナンは、華人というマレーシアにおけるマイノリティがマジョリティを占める一州として、自由港としての地位を失うなど、マレーシアという国家の中でむしろ脇に置かれた。この結果、シンガポールとは異なり、旧市街の建物が多く残り、2008年にユネスコ世界遺産に登録されている。
 シンガポールとペナンの違いが端的に表われているのが、路上屋台である。
 シンガポールでは、独立国家内における徹底的な管理の対象として、路上屋台を全廃し、全てをホーカーセンターと呼ばれる屋台センターへ移して、徹底管理している。
 これに対して、ペナンでは、路上屋台が、今なお健在である。
 以上の文脈の下、本研究では、ペナンの路上屋台の実態を現地調査し、その現状を記録し、その社会的役割を明らかにする。
 ペナン州は、ペナン島とマレー半島の対岸部から成る。このうちペナンの中心であったのが、ペナン島東北部のジョージタウンである。そのエリアは、ユネスコ世界遺産に登録されるにあたって、以下の三地区に分けられている。
 (1) 「コア・ゾーン」に指定されたエリア
 (2) 「バッファ(緩衝)・ゾーン」に指定されたエリア
 (3) ユネスコ世界遺産の指定から外れたエリア
 ペナンに無数にある路上屋台を調査研究するにあたって、調査対象とするエリアを絞らなければならない中、本研究では、この分類を活用し、(2)のバッファ・ゾーンを中心に研究を進めている。(2)は、保存を第一とし新たな開発が制限される(1)と、高層ビルが建つなど開発が進められている(3)との間の緩衝地帯として設定されており、保存と開発がせめぎ合う興味深いエリアである。
果たして、この(2)のエリアで、路上屋台はどのような社会的役割を果たしているのであろうか。
 研究成果を公表すべく、現在、現地調査をもとに分析を進め、論文を執筆中である。

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