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近世地方仏教寺院の史料学的研究

社会システム学科 教授 青柳周一
 滋賀県米原市柏原の天台宗寺院であり、地域を代表する古刹である成菩提院について、申請者(青柳)は東北大学の曽根原理氏や、岐阜大学の朴澤直秀氏らと共に、同寺に保管されている近世期の古文書を数年来調査・整理してきた。その成果は、これまで青柳「米原市柏原成菩提院所蔵の近世史料調査について」と、青柳・曽根原・朴澤「米原市柏原成菩提院史料の紹介と解説」の2本の研究ノートにまとめ、附属史料館『研究紀要』43号(平成22年3月)・44号(平成23年3月)に掲載し公表した。
 23年度には上記のような研究蓄積を踏まえつつ、学術後援基金の助成を受けることにより、成菩提院の古文書の調査・整理を進展させ、さらに同寺の近世地方仏教寺院としての特質の解明を目指して共同研究を実施することとした。
 共同研究のメンバーは、青柳・曽根原氏・朴澤氏のほか、仏教史および近世日本史を専攻する東京・京都などの研究者によって構成した。これら研究者が参加する現地調査および共同研究会(1泊2日)は、23年度内に3回(参加者は5~7人)にわたって実施することができた。3回のうち2回が本学術後援基金の助成によるものであり、その開催日は7月30・31日と24年3月8・9日であった。
 本研究助成を受けたことにより、23年度には約1,000点の古文書について調査し、そのデータを目録化することができた。これで、成菩提院の所蔵する近世文書のうち、約3,000点の調査が終了したことになる。共同研究会の成果は、青柳と研究会参加メンバーとの連名で、研究ノート「米原市成菩提院所蔵史料の紹介と解説(二)」を執筆し、附属史料館『研究紀要』45号(2012)に掲載することができた。この研究ノートでは、近世成菩提院における仏教儀礼、また近世天台宗教団内における成菩提院とその末寺や延暦寺との関係、幕末の成菩提院の状況、成菩提院と彦根藩の領地経営上の関係、興行(開帳)をめぐる成菩提院と大坂商人との関係などが具体的な史料をあげて分析されており、地方仏教寺院としての成菩提院の特質が多面的に明らかにされている。
 また、成菩提院の古文書調査に必要な物品(古文書保存用中性紙封筒、ノンバッファー紙、チリトリ付きミニブラシなど)を購入することができた。これによって、現地調査と共同研究を行うための環境が整ったとともに、成菩提院の古文書を将来にわたって保存することが可能となり、地域の貴重な歴史文化財の継承に貢献することができた。

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